学園の社長〜社長の連盟騒動〜-18
「錦田、お前も笑え! 俺たちのこの十数年間の人生はこんなサイコーの形で幕を閉じるんだぜ。まっためでたいぜ。ユーレイになったらあのクソジジイにこのお礼をしてやろうぜ。なんせ最高の幸せを教えてくれたステキなおじい様だからよ。まったくメチャクチャに殴りたくなるほどステキでお茶目な野郎だったぜ」< /SPAN>
錦田は答えない。何とかいえよ。じゃなきゃこっちがシラけてしまう。ずっと何かを考えているようだった。
やがて錦田がいった。
「ようし、決めた」
「なんだよ」
「潜水連盟に入ることに決めたのだ」
「い、いまさら何いってやがる」
「このままここで耐えていても私たちは死ぬのを待つのみだ。ここで生命を無駄にすることはない。何より君を巻き込んだ私の責任だしな」
「まさかあの野郎に屈するつもりかよ。お前にとってはこんな出来事は日常茶飯事じゃねーのかよ」
「いや、今回は本当にまずい。残念だが、あの船長にはしてやられたよ。最初からこうなることを読まなかった私の責任だ。船長がむざむざと帰らせたのは罠だと気づくべきだったのかもしれない」
錦田は一本取られたとばかりに、ハハハと笑った。
「ちょ、ちょっと待てよ。お前が連盟とやらに入ったらどうなるんだよ。学園はどうなるんだよ」
「潜水連盟に入ると、基本的に潜水艦で生活しなければならないたね、学園には通えなくなる。よって自動的に退学処分を受けることになるんだ。船長は自由だとはいっているがそれはあくまで海の中でのお話だ。寂しくなるが君とはもう別れだ。君と会ってたった一ヶ月しかたっていないが」
「ここまでがんばってお別れってそりゃねえよ」
「君の気持ちは非常にうれしいが、ここで私たちが餓死したら二度と会えないだろう。だが、ここで助かればまたいつかは会えるさ。気が進まないがこれは一つの解決策だ」
「いや、俺は反対だね。ふざけるなといいたいぜ。確かにお前が連盟に入れば、救われる。しかしそのあとはどうする。生きて学園に戻ったとしてもお前が退学になった日から、俺はクラスで空席になったお前の席を見るたびに後悔するに違いない」
今、俺の人生ベストスリーに入るくらいのカッコいいことをいった気がする。決めすぎたのか、少し照れくさくなった。
「おい、どうしたよ。まだ迷ってんのか?」
錦田はある一点を見つめたまま動かない。
そしてつぶやきながら、
「君、もしかして助かるかもしれない」
「望みだと?」
「この潜水艦には主電源とは別に非常用の連絡装置がついているんだ」
「なにぃ? なんで今までそんなことに気づかなかったんだよ」
「いや、実はこの数日の間に気づいていた。しかし、誰かに助けを求めようとしてそれをつかったが、返信はまったく来なかったんだ。山崎はそこまで見越して、非常用の連絡装置までを止めてしまったんだと私は思ったよ。そのままそのことは忘れていたよ。そして今になって何度も何度もとめられたはずの非常用装置 から、返信を知らせる信号が来ているのを今見たんだ。これが幻覚じゃなきゃいいが」
錦田は操縦室の隅に向かい、「見てくれ」とある一点を指した。そこを見ると赤いランプが点滅を繰り返していた。しばらくすると操縦する機械の一部がはずれた。その下から計帯電話のようなものが出てきた。それは何度も振動していたのだった。
『ようやく通じましたね』
人の声が聞こえる。その声は山崎とは別のものだった。
「船長はどうした? 彼にこの装置を止められていたのではなかったのか?」
錦田が機器を通して聞いた。
『あなたのいう通り、この機器がつかえない状態でした。船長が止めてしまった上、この機器のコントロールを見張っているのです。この機器のコントロールは支部の建物内にある管理室という場所にあるのです。それは、連盟支部の所有しているすべての潜水艦を統括する部屋なのです。我々は火事を起こしたりして船 長をなんとか騙して部屋を出させました。あなた方には知らせなくてはならないことがあるのです』
通信機の声はさらに続けた。