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学園の社長〜社長の連盟騒動〜
【ミステリー その他小説】

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学園の社長〜社長の連盟騒動〜-17

「とにかくこうなったら徹底的に抗戦してやるぜ。お前もあんなへんちくりんな組織に入りたくないだろうがよ」
「確かにそうだが、するとこのまま閉じ込められることになる。私はともかく、君は無関係だ。そうだ、君だけでも助けるようになんとか説得してみよう」
 通信機のスイッチを押そうとした錦田を静止した。
「まあ待て、俺だけ助かってもしょうがない。俺も付き合ってやる。ここは向こうが折れるのを待つ」
「いや、その気持ちはありがたいがあの人もそうかんたんには折れまい。やはり一人でも確実に助かったほうがいい」
 錦田は通信機のスイッチを押し、マイクを通して俺を助けるように懇願した。そしてしばらくすると通信機から山崎の声がした。
『大変素晴らしい友人をお持ちのようだが、一人だけを助けるのは非常に難しい。それに二人とも助かったほうかいいだろう。我輩は助けるならできれば二人とも助けてやりたい。まあ君が連盟の幹部になってくれればだが…』
 そう聞こえると、スピーカーは再び通信がこと切れてしまった。とことん山崎は憎たらしい男だ。柔和な口調でいっているのが余計腹ただしい。俺は必死で通信機をブッ壊しそうになる衝動を押さえた。
「錦田、もう二度とコイツの声を聞きたくない。交渉決裂だ」
 俺は抑えつけるようにいった。錦田は無言で通信機のスイッチを切ったあと、「すまない」と口から漏らすようにいって再び黙りこくってしまった。
「謝るな。迎えが来る望みがなくなった以上ここから脱出する作戦を考えようぜ」
 十分な酸素と食料があるのは不幸中の幸いだった。山崎は俺たちに考える時間を与えているようだ。
 それから潜水艦の中で一夜を明かし、次の日から善後策を練ることにした。潜水艦を探検して、脱出装置があるかどうかを探した。しかし、それらしきものはまったくなかった上に、あったとしても船長があらかじめ使えないようにしてあるだろうという推測の結果、脱出装置はあきらめることにした。その後もいろい ろな手を考えた。潜水艦に付属していた酸素ボンベで海上に脱出することを提案したが、錦田に止められた。もしここがかなり深い場所だったら浮き上がる前に水圧につぶされるだろうというわけだった。
 そしてその他にもいろいろな話をした。主にお互いのことについてだ。今年から親とはなれて暮らす俺と違って錦田は中学一年から住む家を与えられ、親とは別の暮らしを始めていた。その親の人脈もあり、幅広い業界に知り合いが多いらしい。その中には有名なミュージシャンや、芸能人もいるとか。こればかりは信 じられない話だったが潜水連盟なんて奴らと知り合いなのだからハッタリではないのだろう。そんなこともあって忙しいのか錦田は高校一年から明奉学園にいたにもかかわらず、ほとんど学園について知らなかった。行事もあまり参加しておらず、出席数もギリギリで足りなかったそうで、学園の進級判定会議にかけられ進級が危ぶ まれたらしい。だが教師の印象はよく成績は常に上位をとっているので特別に認められたとか。しかしそんな学園生活は霞んで見えるほど、錦田の私生活は奇怪極まりないものだった。彼の知り合いの研究者の行う実験とやらに招待されることがあるらしい。そしてその実験に参加した結果、精神を一時的におかしくしたことや、金 縛りにあい、幽霊などの幻覚を何度も見ただとかまるでSF物語のようでウソの様な話だった。しかし半信半疑な一方、とても面白くて興味をそそられ、俺は夢中になって錦田の話に聞き入ってしまった。とにかく中学高校とタダの悪ガキの集まりだった俺とはまったく違った日々を送っていたそうだ。
 さて、話をもどそう。そんなこんなで俺たちの潜水生活は五日間がたとうとしていた。それなりにあった食料は半分ほどに減っている。錦田の用意した酸素機器のおかげで酸素は作ってもいるのでまだ十分にあるが、一向にここを脱出する手段は思い浮かばなかった。それが俺の焦燥感を煽った。もはや助からないんじ ゃないかという絶望が心のそこから浮き出す。学園の授業も欠席だった。このままだと学園側が俺の失踪を、遠くに住んでいる俺の親に知らせるだろう。そうなればかなり厄介なことになる。そもそも生きてここから帰れるかさえもわからなかった。
「どうだオラァ! もしかして俺たちは化石になれるかもしれん。気が遠くなるほどすごく未来にな! 俺たち二人のホネはどこかの考古学者にハックツされてルーヴル美術館にでも展示されるに違いねえ! ああ、でも美術館じゃ俺たちのホネは飾れねえなあ。ハハハッハハアア」
 俺は操縦室で腹を抱えて笑う。意味のわからない笑いだった。自分は気が狂っていた。自覚しているが止まらないのだ。どうせ死ぬなら笑って死のう。ポジティブに死のう。苦しまないで死のう。なんでもいい、すべてを笑い飛ばしてやる。


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