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学園の社長〜社長の連盟騒動〜
【ミステリー その他小説】

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学園の社長〜社長の連盟騒動〜-14

「自動操縦だから、勝手に島の海岸まで連れて行ってくれるそうだ」
 錦田がそういって潜水艦に乗り込むと奥のほうに消えていった。自動操縦のこの潜水艦は操縦者すらいらないらしいので、俺の方はさっそく寝室のほうに行き、ベッドの上に疲れた体を放り出した。ウーン、と精一杯の伸びをする、今日はいろいろあった一日だった。本当に驚きの連続だったのだ。これだけの体験をし たのは、遠く離れている俺の両親や学園にいるクラスメイト達は知る由もないだろう。
 しばらくすると俺はベッドから身を乗り出して壁の一角にある窓から外を見てみる
あたり一面にさんご礁が広がり、その上を小型の魚が行き来して海を鮮やかに彩っていた。
そこはまさに海中の楽園といっていい光景だった。こんな美しい場所が地球上にあるとは。もしも天国が存在したとしたらそれはこのような場所なのだろう。自分は今この幻想世界の住民なのだ、と恍惚な気分にさせられたのだった。こんどいくときはカメラを持っていくことにしよう。俺はそう心に誓ったのだった。
地上に戻るまでしばらく時間もあることだし、映画でも見ることにする。俺はソファに移動し、上にあったリモコンのボタンを適当に押した。スクリーンにあらかじめセットしてあったのだろう映画が再生される。そこには熱帯雨林が広がっていた。カメラはジャングルの中へと入っていき、カラフルな羽をつけた鳥が木 の上に止まっている光景が映し出される。どうやらジャングルの奥地を撮影したドキュメンタリー映画のようだ。ジャングル内に生息する虫の無数の羽音や、鳥のさえずりがスクリーンの側のスピーカーから溢れてきた。その映像をBGMとして流しながら、俺は再びベッドの上に体を預けた。と同時に睡魔が襲ってきた。まぶたが 重い。そういえば今日は体育の授業があったなぁ。疲れの原因はそれだけじゃなさそうだが…。
「………」
 目の前は魚の大群の光景から変わっていた。岩礁の上をタコのような軟体動物が這っている。ソファーの前にあるスクリーンには青い静止画面が無機質に移っていた。もうドキュメンタリー映画は終わっているようだ。俺は睡魔にとうとう勝てずしばらく眠ったのだ。
 眠り足りないせいか、まだ体が重い。俺はフラフラしながらベッドから身を起こしスクリーンの側にある振り子式の時計のほうに目を向ける。どれくらい寝たのだろうか。一体今は何時なのだろう。
「ってぎゃあああああ!」
 俺は思わず叫び声を挙げた。既に夜の十時を過ぎている。二度寝したかった気分が一気に吹き飛んだ。もう学生寮の夕食時間はとっくに過ぎており、まもなく門限を迎えるころだ。しかし窓を見てみると俺はまだ海底にいるらしい。こんな馬鹿な。行ったときとはかかる時間が違いすぎる。俺は全身から冷や汗が湧き出 るのを感じた。落ち着け、落ち着け。俺は自分に言い聞かせながらも今の状況の把握に努めた。時刻は夜の十時、そしてまだ島についていない。どこにいるのか、俺はもう一度窓の外を凝視する。そしてあることに気づく。潜水艦がまったく動いていないのだ。さっきの岩場から一ミリも進んでいない。これでようやく把握した。非 常に説明するのがつらいほどの残酷な状況だった。俺は何も考えず、押し黙ったまま錦田を探しに寝室を出た。なるべく廊下の窓を見ないようにしてあちこちの部屋を巡回した。
 錦田は操縦室にいた。操縦席に座って何かをしている。
「おい、錦田」
 錦田は俺のほうを向いて「ああ、君か」といったあと、再び操作する機械のほうに集中してしまった。
「き、君かじゃねーよ。一体どうなっちまってるんだよこれは。さっきから潜水艦がまったく動いてないじゃねーか」
「ああ、三時間前からずっとこの状態だ。自力で運転しようと試みたもののこの潜水艦は全部自動操縦にまかせているからこれがいかれると、手動も効かなくなるらしい」
 十分もすると「駄目だ」といって椅子から立ち上がった。さじを投げたようだ。
「錦田、もしかしてこれって……」
 俺はさっき以上に恐ろしい予感に襲われた。無実の罪で死刑宣告をされるとこんな気分になるのだろう。
「ああ、どうやらここに閉じ込められたらしい」
 錦田が肩をすくめていった。
 俺は膝をつく。ああ、とうとう知りたくなかった現実を知ってしまった。


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