冷たい情愛(番外編)唯一の恋人へ-5
彼女の誕生日。
俺は本をカバンに入れる。
(誕生日じゃ…さすがにここには来ないか…)
考えてみれば高校生。誕生日くらい友達か家族と過ごすであろう。
俺はブラインドを上げ外を見た。
日が短いこの寒い季節…外はすでに夕暮れだった。
俺は…
いつのまにかここで…
毎日毎日…彼女が来るのを待っていた。
勉強が終わった後…段々と増えてきたたわいも無い会話をするのが楽しかった。
友達が授業中居眠りをして、ノートに涎を垂らした顔が面白かったとか…
帰りの電車から見えた夕日が綺麗だったとか…
今日のお弁当はから揚げでラッキーだったとか…
彼女の平凡な毎日の日常が、俺の心を平和にさせた。
好きな人と過ごせる幸せ。
ドアをノックする音がした。
「先生、今日も勉強したいんだけど…忙しいですか?」
俺の大好きな生徒は、可愛い笑顔でそう言った。
嬉しかった…
誕生日に、俺のところに来てくれた事。
「誕生日だな…おめでとう」
俺は2時間ほど指導した後、彼女に言ってみた。
「先生、なんで知ってるんですか?」
「いや、生徒一覧のデータで見たから」
「先生は、全員のデータを見てるんですか?」
「バカか、んな訳ないだろう…お前のだけだ」
「うん、16歳になっちゃいました」
「だな〜、設楽ももう大人だな、結婚できるぞ」
(俺はなんてこと言ってるんだ…)
自分の失言に焦ってしまった。それを隠そうと必死に笑顔を作った。