冷たい情愛(番外編)唯一の恋人へ-4
「じゃあいい…聞いた俺がバカだった」
「まさか設楽にか?」
俺は顔がカッと熱くなった。
東北の実家に戻っている婚約者には、考えて物を贈ったことなど無かった。
記念日が近くなると勝手に欲しいものをねだってきたので、それを買い与えれば簡単だったからだ。
俺は何を考えているんだ…
教師が生徒に片想いして、誕生日にプレゼントしようなんて。
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アクセサリーか?
いやいや…いかにもって感じがするし…
生徒にそれはまずいだろ…。
俺は休日、久しぶりに都内まで買い物に来ていた。
設楽に何をあげよう…
教師として生徒にあげて不自然じゃないもの…
全く思いつかないので、気晴らしに俺は本屋に入った。
ブラブラと歩く。
目の前にはたくさんの小説のハードカバーが並んでいる。
俺は一冊の本の前で立ち止まった。
(懐かしいなあ…)
それは、俺が学生時代に読んだ一番好きな小説だった。
男女の手紙のやりとりが綴られている小説。
手に取ってパラパラとページをめくる。
恋愛小説でもなく…派手な内容でもない。
ただ淡々と、二人の過去と現在の心が綴られている。
俺はこの本を…彼女に読んで欲しいと思った。
これにしよう…
16歳になる彼女には、この小説はどんな風に映るのだろう…。
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