冷たい情愛(番外編)唯一の恋人へ-3
チャイムが鳴る…
生徒たちは一斉に自分の教室に戻るため走っていた。
俺の真正面からは…噂をしたばかりの生徒…
設楽と仲間たちがワイワイ騒ぎながら走ってきた。
「先生も遅れちゃいますよ〜!!」
女子生徒の輪はそろって俺に声をかける。
設楽も笑いながら俺を見ている。
その姿はまだ幼い…
これから大人になるその一瞬前の…
眩しすぎて仕方のない…
そんな人生の時に居る彼女を…
俺は好きになってしまった。
・・・・・・・・・
職員室で資料を見てみる事にした。
1-5 設楽紘子(シタラヒロコ)
性別・女
血液型・A
生年月日・昭和○年1月12日
名倉町立名倉第二中学校出身
入学時成績ランクB-1
家族構成:父(○○製薬株式会社勤務)母(主婦)妹(名倉町立中央小学校6年)
標準的な家庭に育った普通の女の子…そんな印象だった。
俺は、いつもの準備室で本人に尋ねてみた。
「お前はどこの大学狙ってるんだ?」
「先生と同じところだよ、学部は違うけど」
少し黙ってから、彼女は口火を切った。
「うちね、古い家なの。お祖母ちゃんは死ぬまでずっとお母さんの事苛めてた。跡継ぎも産めないくせにって…」
男児が居ない旧家か…男尊女卑もいいところだな…。
この女子生徒が、大学進学のそのまた先まで考え…
社会で上に行きたいと願う理由が、少し分かった気がした。
そして…
俺はどうにかその夢を叶えてやりたいと思うようになっていた。
・・・・・・・・・・
「女ってさ、何が欲しいもんかなあ」
俺はある日、山本に尋ねた。
「…その質問をする理由を俺は先に知りたいねえ」
山本はテンション高めにニヤニヤして言う。