冷たい情愛(番外編)唯一の恋人へ-18
「先生…あのね…卒業しても…会ってくれる?」
俺は…嘘をついた。
「ああ…勿論…」
設楽…ごめんな。
情け無いな…全部捨てられないのは俺が弱いからだよな…
設楽…
卒業おめでとう。
制服を脱いだら、お前も大人になるんだな。
まだ薄寒い空気の残る3月…
彼女の姿を見た最後の季節。
15だった彼女は…今日、その着慣れた制服を脱ぐ。
「卒業したら…先生じゃなくて、なんて呼ぼうかな」
彼女は空を見上げてそう言った。
俺も同じ空を見上げる。
青色の綺麗な空だった。
俺は少しだけ涙が出た。
人から見れば、教師と生徒の…一時の恋だろう。
少女から見れば、若さ故…の恋だろう。
俺からすれば…唯一の恋だろう。
「そうだなあ…下の名前かなあ」
俺は答えた。
「えへへ…なんか恋人みたいだね…でも、暫くは先生って呼んじゃいそうだな」
この生徒は…いや…この女性は…
俺に出会えて良かったと、そう思い人生を終えてくれるだろうか。
もしそうだとしたら…俺は自分が生まれてきて良かったと思えるはずだ。
この女性の人生の踏み台になれたのならば。