冷たい情愛(番外編)唯一の恋人へ-16
それでもいいんだ…
今だけ…君が学び舎で過ごす間だけは…
淫らな姿の君も…
友達と廊下ではしゃぐ君も…
まっすぐな目で俺を見る君も…
コンビニで買ったお菓子を自慢する君も…
ドアを開け、嬉しそうに会いに来てくれる君も…
俺のものであると、錯覚し続けて…いたいんだ。
・・・・・・・・・・・
俺は休日も彼女を誘うようになった。
部屋で体を結ぶことも多かったが…それ以上に外に連れ出していた。
彼女にはなんでも経験させてやりたかった。
とにかくどこにでも連れて行った。
こうして、彼女と一緒にいたいんだ。
かわいらしい口から発するたくさんの問いに、答えるのが嬉しかったんだ。
「先生…手、つないでいい?」
「なんか恥ずかしいな」
「あたしだって恥ずかしいもん」
彼女は、小さく白い手をつないできた。
手をつないで歩く…そんなことだけで、俺は幸せだった。
恥ずかしそうに俯くこの少女は…手放したら二度と手に入らない。
いつかは離さなければならないこの手。
この手を離したら…
俺の心は生きてゆけるのだろうか。
・・・・・・・・・
「いい加減に戻ってきたらどうなんだ…けじめってものがあるだろう…」
恩人(とは思いたくないが)からの電話だった。
最初一年という約束を、どうにか伸ばしてもらっていたが…
それももう限界だった。
あの女も待ちきれないのだろう…。
俺はもう、自分の人生を選ぶ事は許されない。
あの女と一緒になり…生きていかなければならない。