タイミング-1
「お前、本当ほっとけないよな。」
すべての始まりはこの一言だった。
背が高くて、オシャレで、気配りのできる人。
唯一、私を塞き止めていた理由は彼女がいることだった。
でもダメだったんだ‥。
高二の夏、裕子と一緒に始めたバイト。そこで知り合ったのは違う学校で同い年の宮川君。
最初は年上かと思って『宮川さん』なんて呼んでた。
バイト先では先輩の彼は大人で私に優しく仕事を教えてくれて、男に免疫のない私は簡単に落ちてしまうところだった。
でも彼の携帯の裏には彼女と写ったプリクラが貼ってあった。
バイト中でも隠れてメールを打ってたのは彼女のためか‥。
まだ大丈夫。
まだそこまでじゃない。
まだ好きじゃない。
これはまだ恋じゃない。
だから失恋じゃない。
必死に自分に言い聞かせて堪えた想いがたった一言で溢れてしまった。
ほっとけないのは私が仕事でミスしてばかりいるから‥‥。
私がミスをすれば店長に怒られるから目が離せないだけ‥‥。
わかっているのに鼓動が高鳴る。
それからシフトを出すときもわざと同じ日にしてみたり、上がった後でも来るのを待ってみたりして‥。
往生際が悪い。
悪足掻きもいいとこだ。
頭では解ってるのに、心ではどこか期待していて‥。
九月
「彼女と別れた。」
奇跡かと思った。
今だ。
メアド聞いて、たくさんメールして‥‥‥。
いつ聞こう‥‥
明日も一緒じゃないや‥
今週は入ってない。
テストなのかな‥。