母と私のお話。〜学びの巻〜-2
「あやちゃん、そのせんべいお食べなさい。」
無邪気に湿気たせんべいを勧める母。
「湿気たのはいらないって」
「あら、あやちゃんは何時からそんな贅沢になったの!?」
…湿気たせんべいを食べれないのは贅沢なのか。
むしろ、子どもに湿気たせんべいは食べさせないでくださいよ。
「いい?世界には食べたくても食べれない人が沢山いるのよ。そんな時代なのよ」
母さん。
そうだとしても、少なくとも湿気たせんべいを求める人はいない時代だよ…。
「だから、あやちゃん。食べれる時は食べておきなさい」
なんだその一世代以上前の発想は。
「じゃぁ、母さんが食べればいいじゃん」
小さな反論した私を母は真っ直ぐに見詰め言い放った。
「湿気たせんべいなんていらないわ」
世界の不条理を学んだ瞬間でした(-_-#)
『母さんと夢』
私が小学生の低学年だったと思う。
その頃の私はある夢を持っていた。
「わたしぃ、スチュワーデスぅになるのぉ」
多分、ドラマか何かを見て唐突に憧れを抱いたのだ。
子どもならよくある話です。
「でもそしたら母さん寂しくなるな」
母が私の手を握る。
その瞳は真剣で本気だったのを覚えてます。
「どうしてぇ?」
「スッチーなるとね、一生飛行機に乗らなきゃいけないの。そしたら母さんあやちゃんに会えなくなるわ」
今なら分かる。
スチュワーデスは一生飛行機に乗ってる訳じゃない。
貴方を信じたばっかりに後々、娘は恥をかきましたよ。
しかして、無垢なる心を持つ幼い私は信じてしまった。
「じゃぁ、一緒にスチュワーデスぅになろぉ」
「それは出来ないわ。主婦は忙しくて副業をしてる暇ないのよ」
これも今なら分かる。
子どもに何言ってるんですか、母さん。
「でもあやちゃんがどうしてもやりたいっていうなら我慢するわ。世界一周に招待してくれるなら」
「うん、分かったぁ」
「じゃぁ、こっちにいらっしゃい。あと、親指貸して。そうそう判子のようにやるのよ」
「おかぁさん。ここの文字なんていうのぉ?」
「契約書って言うのよ。じゃぁ、名前書いて親指をそこに押し付けましょうね」
そして、ここに契約が完了した。
今でも母は時々「早く世界一周連れてってね」と契約書をちらつかせ言います。
小さい指紋と汚い私の名前付きの。
…今後、親指は軽々しく渡しません(ToT)