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『傾城のごとく』
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傾城のごとくU終編-8

ー翌日ー


立ち昇る煙を私はジッと眺めていた。
僧侶の方による簡単なお経の後、クルマに乗った小さな火葬の機械に、チコを入れた箱が入って行く。

母や姉はすがるように見つめているが、私は動けなかった。


現実とは思えなかった。

これは夢の中の出来事で、目覚めれば、いつものようにチコが居るように思えてならない。


でも、現実は私に残酷な物を突き付ける。

火葬が終り、機械から出て来たのは白く、細くなってしまったチコだった。


「…あああ…あぁぁぁ…」


私は力無く跪いた。幼ない子供のように声をあげて泣いた。

チコは死んだのだ。


私は現実を受け入れた。





ー翌朝ー

「…いって来ます…」

私はトボトボと学校へ向かった。
学校にいれば少しは気が紛れるように思えた。

「千秋ぃーー!」

後から亜紀ちゃんが呼んだ。

「…おはよう…」

私を見た亜紀ちゃんの顔がみるみる変わった。

「…ど…どうしたの…?」

亜紀ちゃんの声に私は俯いたまま、

「…日曜日、チコが…」

私はそれ以上言えなかった。

「…そ、そんな…まだ1歳なのに…」

亜紀ちゃんは、それだけ言うと涙を流してくれた。


私は思う。

私や私の家族。病院の先生に看護師さん。そして、亜紀ちゃんが、チコのために涙を流してくれる。

…ああ、あのコは幸せだったんだなぁ……



私は空を見上げた。

空は初めて出会ったあの日のように、鉛色の雲が垂れ込めていた。


チコ、ありがとう。そして、さようなら……



…「傾城のごとく?」完…


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