難読語三兄妹恋愛暴露~次女Ver.~-1
世の中なんて、何が起きるか分からない。
例えば妹なんかが良い例だ。自分の中での『間違い』が起きてしまったのだから…。
俺たちの街の冬は校舎内であっても寒い。ならば、外にあるゴミ捨て場は極寒である。故に…
「あんたゴミ捨ててきなさいよ〜」
「おめぇ行けよ、ブース!」
こんなに若々しい中学生ですら寒さには勝てないのだ。
「じゃあ私行ってくるね!」
自ら進んで魔のゴミ捨てに行こうとする少女が一人。
「日和ちゃん、いいの?」
「いいよ!その代わり、明日は違う人だからね?」
彼女はそう言ってニコッと笑うとゴミ袋を持って颯爽と教室を出ていった。
「はぁ〜、日和ちゃんて完璧だよね〜」
わらわらと集う女子達。
「うんうん!頭良いし、可愛いし、性格良いし」
「名前の通りって感じ」
「ひよりってどういう意味?」
「穏やかに晴れた様子」
「へぇ…天使みたいだね」
だけど少女達は知らない。その天使がかったるそうにゴミ袋を引き摺りながら歩いているなんて…。
「さむ…」
誰もいない廊下で彼女は呟いた。
「面倒臭い…ガキか」
まるで別人のような彼女。さっきのニコッはどこまで飛んでいったのか…。
寒そうに腕を擦る彼女に対する嫌がらせか
「窓開けたの誰」
ヒョウッと冷たい風が吹いてきた。そして風と共に誰かの話し声も彼女の耳に入ってくる。彼女は物音を立てないようそっと窓の下を覗いた。
「サボっていーの?」
「いーの。どうせ他の奴らが掃除すんだから」
そこに居たのは一組のカップル。この寒い中、よく外でイチャコライチャコラ出来るもんだ。
「掃除なんてアホらしいことやってられっかよ」
「キャハハ!だよねーっ」
そんなカップルを見ていた彼女はニヤッと笑うと
「この私ですらやってんですけど」
と呟いた。
「ん?」
「何か声…キャーッ!」
数分後、カップルはゴミに塗れて呆然と立ち尽くしていたし、ゴミをカップルに振り掛けた当の本人は「ゴミ捨て終わりー♪」と上機嫌で教室に戻っていた。
この天使の皮を被った悪魔こそ俺の下の妹、宇奈月 日和なのだ…。