難読語三兄妹恋愛暴露~次女Ver.~-7
「おい、日和!」
立ち止まりすらしない。
「シカトかよ!」
振り返ることもない。
「おいっ!ひよ…」
「何でもないの」
日和が朝香に笑い掛けた。
「あの人とは知り合いでも何でもないの。行こう」
朝香はほっとしたのか口元を緩ませて
「だよね!日和ちゃんがあんな人と知り合いな訳ないよねぇ」
と胸を撫で下ろした。
その時、ずきん…と日和の胸が泣いた。だけど、それに気付かないふりをした。
二人は琢磨に目もくれず歩き出す。
後には寂しそうに二人が歩いていった方を見つめる琢磨だけが残った。
「もぉ、びっくりしたよっ」
朝香はニコッと笑った。
「あんな人とお友達なのかと思っちゃったじゃん」
「…うん」
日和は俯いて空返事をした。
「日和ちゃん、ダメだよ!もし、あんな人と一緒にいるところ先生に見られたら日和ちゃんの内申下がっちゃうかもよ?」
「…うん」
何かおかしかった。
「…日和ちゃん、大丈夫だった?何もされてない?」
「ヘーキ」
日和は窮屈だと思った。
今まで感じたことのない気分だ。空気が狭くて、息苦しくて、居たたまれなくて、窮屈…。
本当は、内申とか評判とかそんなちっぽけなモノどうだってよくなっていた。
そんなことより、もっと大事なモノが何なのか分かっているのに。
「日和ちゃん?具合…悪い?」
様子のおかしい日和に朝香はそっと声を掛けた。
「そんなんじゃない」
「え?」
「私はそんなんじゃない!」
朝香は目を丸くした。聞いたことの無い日和の声に驚いた。
低く強い声。
簡単に言うなら俺を脅す声と一緒だった。
「…え、何?日和ちゃん?」
答えもせず日和は来た道を走りだした。手足を大きく振って、少しでも早く走ろうと必死のようだった。