難読語三兄妹恋愛暴露~次女Ver.~-6
「知るか」
だけど俺には、ため息をついた日和の口元が少し上がって見えた。まるで、笑いたいのを必死で堪えているかのように…。
その日を境に、何だかんだ言いながらも、日和は河川敷に毎日通うようになった。
時には日和が待ち、時には琢磨が待ち…。お互い放課後は必ず河川敷に寄るのが暗黙の了解になっていた。
「また体育サボったのかよ!ったく日和は不良だなぁ」
「その言葉、琢磨に一番言われたくないよ」
最初は「うん」とか「違う」とかしか言わなかった日和の言葉も増えてきた。
「高校行かない人間が何言ってんだか」
前に日和が
「高校どこ行くの?」
と聞くと、琢磨は胸を張って
「え?オレ?行かねぇけど!」
と答えていた。それ以来、日和は皮肉を込めてこのように言うことが多かった。その度に琢磨は「差別反対〜」と言う。そのやりとりが何となく日和は好きだった。
「あっ、日和!そのことなんだけど」
「日和ちゃん?」
急に名前を呼ばれた日和は驚いて振り向いた。
体が凍り付くような感覚に襲われる。隣では「何?日和の友達?」とにこにこしながら琢磨が日和の腕をポンポンと叩いていた。
「朝香…ちゃん」
なんと、少し距離を置いたところに朝香が立っていた。
琢磨とは対照的に彼女は信じられないとでも言うように日和と琢磨を交互に見ている。
「えっと…日和ちゃん…あの、その…。…知り合い?」
こうなるのがいやだった。いつかこうなるかもしれなかったのに。
日和はきょとんとしている琢磨を見た。
「ごめん」
唇も動かさないほど小さな小さな声だった。
「は?」
聞き取れずに琢磨は聞き返す。
それに返事をすることはなく日和はすっと立ち上がった。
「おっ!ビビったぁ」
日和は何も言わないで琢磨に背を向けた。
「おい、どしたんだよ!」
朝香に向かって歩いてゆく日和。