難読語三兄妹恋愛暴露~次女Ver.~-5
「え〜、話させろよ」
「やだ。つまんない。大体ね、あんたみたいなアホの隣に座ってるだけでも時間の無駄なのに」
「何だよ、アホって!」
「あんたの存在そのものがアホ」
「それ、オレ基準か?オレが主役ってことか?すげーじゃんオレ!」
アホだ。完璧なアホだ。そしてポジティブなアホだ。世の中琢磨みたいな奴ばっかりなら、平和な世の中になるに違いない。
「はぁ〜…調子狂う」
日和が面倒臭そうに顔を背けた。
「え、何?オレ何か変なこと言った?」
「帰る。返せ」
日和は琢磨からコートをはぎ取った。(ちなみにその時琢磨は「キャー、エッチ〜ィ」と少し楽しんでいるようだった。)
「さみぃっ!」
「知るか。あんたみたいなヤンキーと一緒にいるところ誰かに見られたくない。私の評判落ちんでしょ」
「んだよ、それ。差別反対〜」
琢磨は小さく握りこぶしを掲げた。
「差別されたくなかったら私と同じ秀高入ってみな。そしたらあんただって少しは…」
「琢磨!」
琢磨が大声を出して日和の言葉を遮った。
「オレの名前は狩野琢磨。あんたじゃねぇ」
日和は目を見開いて、琢磨を見ていた。琢磨が真剣な顔をしていたから、目を逸らせないでいた。
「そしてお前は日和。…覚えたっ!」
ニッと八重歯を見せて笑う琢磨。
「……だから何」
無表情の日和はそのままくるりと回れ右をして歩きだした。
そして琢磨はその背中に叫んだ。
「日和、また話そうぜ!待ってっから!オレ、明日もここにいっから!」
日和は振り返らなかった。いや、振り返えれなかったのだ。日和自らも分かっていた。
日和の頬は綺麗なピンク色に染まっていた。
次の日の夕方。
夕焼け色に光る川の側では琢磨がゴロンと寝転がっていた。
無表情で空を睨んでいる。
次の瞬間、パァッと琢磨の顔が明るくなり、素早く上半身を起こした。
「…琢磨が目的な訳じゃ…ないから」
そこには伏し目がちの日和が立っていた。
琢磨は満足そうにニッと笑って
「うるせぇ。まっ、会話を楽しもうじゃあないか!」
と自分の隣をぽんぽん叩いた。仕方ないとでもいうように渋々そこに座る日和。
「さて、何の話しする?」
琢磨はキラキラと目を輝かせた。それとは対照的に、面倒臭そうに日和はため息をつく。