難読語三兄妹恋愛暴露~次女Ver.~-4
「…ぅぅぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!」
後方から叫び声がした。
これにはさすがの日和も驚いて振り返った。すると金髪の男がものすごい形相で走ってくるではないか!
背後でパシャンと水の音がしたが、日和はこの人間列車みたいな奴に気を取られていて気付かなかった。
「止まんねえええええぇぇぇぇ!!!!」
そして勢いよく日和の隣を通り過ぎていったかと思うと、川を飛び越そうとしたのか列車は地面を強く蹴ったが所詮たかが知れていて、大量の水渋きと共に、静かに列車は水没した。
「……ぶっはあッッ!」
しばらくするとその男が川から顔を出した。そして
「っざけんな、ボケェーッ!誰がホームラン許したよ!?やってらんねーよ、バァーカッッ!!」
と叫ぶと、左手に握られていた野球ボールを思い切り投げた。
それは土手を飛び越え、向こう側の河川敷にまで飛んでいった。
こいつ、獣だ。
日和はそう思った。どんな理由だろうと、人間に目を奪われたのは初めてだった。
ふんと鼻を鳴らすと、男はくるんと日和の方へ体を向け
「てめーも見てねぇで助けろやっ!」
と声を荒げた。
しばらく現状整理をしていた日和。
いきなり立ち上がったかと思うと、つかつかとその男に向かって歩いてゆく。未だ腰まで川に浸かっている男の前に仁王立ちになると、そいつを冷たく見据えて
「三回ぐらい死んでしまえ!!」
と言い放った。
これが狩野 琢磨と日和の出会いだった。
「わりぃな、借りちまって」
「別に」
「オレ、狩野 琢磨。中三」
「……宇奈月 日和」
「宇奈月 日和…?ウナヅキってもしかして、お前破壊神の妹か!?」
「そうだけど…」
「やっぱな!オレの姉貴、破壊神のダチなんだよっ。海羽子っつーんだけどな、なんかよぉ」
「その話長い?」
「まーな!万引きの話なん…」
「知ってるからいぃよ。めんどくさい…」
日和はあの後、琢磨に背を向け帰ろうとしたが「寒くて動けねぇ。オレが凍死したらお前人殺しだかんなっ」と言った琢磨を川から引き上げてやった。中三で殺人犯にはなってられない。
そして唇の青くなった琢磨が物欲しそうにコートを見つめるので、仕方なく貸してやり、帰るにも帰れなくなったのだ。