赤い靴-1
小さい頃、赤い靴に憧れた。
ぴかぴかの赤い、ちょこんとリボンのついた小さな靴。
当時の私は幼くて、その靴がどんな値段かさえ知らずに母に泣いてねだり困らせていた。
けれど、今は違う。
私は年をとり、自分でお金も稼げるようになった。車は運転できないが。たくさん稼いで貯金もたまっている。
今度こそ、赤い靴を手に入れるんだ──。
「で、何、その赤い靴を手に入れるために、俺がわざわざ休日にお前のために車を出すのか?」
「そういうことになるね」
「…寝言は寝て言え」
ナオはそう言うと床に寝転がった。
私は頬をふくらます素振りを見せてみる。
ここは私の部屋で、ナオは私の幼なじみであり数少ない友人でもある。
明日は日曜日で学校はお休み。だから当然私もナオも暇なわけで。
「ねぇ」
「なんだよ」
「どーせ暇なんでしょ?だったらいいじゃん」
「暇じゃねぇし」
「嘘つき」
「…分かりましたよ。行きゃーいいんだろ」
「…やった!!」
小さくガッツポーズ。
そんな私をナオは一睨み。
「その代わり何か奢れよ」
「高校生にたかる訳?まっ、別にいいですけどね」
──そして、翌日。
「ほら、着いたぞ」
うっかり寝てしまったらしい。気付くとそこはデパートの駐車場。
「あぁ」
「『あぁ』じゃねえよ。俺はここで待ってるからな」
「行かないの?」
「誰かに会うと色々面倒だし、第一、お前と一緒に赤い靴探してたら気持ち悪いだろ」
「別々に行動すりゃいいじゃん」
「あ」
何年生きてるんだこいつは、なんて思いながら車から外に出る。
いよいよ、赤い靴が買えるんだ。