白ぃ華が咲き乱れる頃〜love letter〜-2
―それから俺たちは、毎朝3人一緒だった。
てか俺は蘭と2人がイイんだけど…。
だけど、毎日3人で会ってるうちに、俺はある事に気付いた。
のぞみサンはいつも蘭を見てる。しかも、心配そうな顔で…。
何だ??この違和感は…。
そして何日か経ったある日から、蘭はどこか無理をしている様だった。
でも、蘭ものぞみサンも、俺には何も言ってこなかった。
1度だけ、
『具合悪いなら学校休みなよ』
って言った事があったケド、蘭は大丈夫って言うし、のぞみサンも悲しそうな顔をするだけだった。
―ある日、蘭が一人で電車に乗り込んで来た。
のぞみサンはどーやら風邪を引いたらしく、学校を休むそうだった。
正に鬼の撹乱だな。
て、ちょっと待て。て事は、今日は2人きりなワケで。
マジ緊張してきた…。
『ほ、本日はぉ日柄も良いですな、蘭サン』
蘭はキョトンとしてる。
(何言ってんだよ俺!今日メチャ?曇ってるし、声裏返ってるし!呆れられてるし。最悪)
「…ぷッ。クスクス。そうですなぁ、涼輔サン」
(何かウケてるし。まぁ、良かったケド)
「良かったぁ。あたしスゴイ緊張してたの。でも、涼輔クンったら…クスクス」
蘭は堪えるように笑っている。でも、それがスゴク可愛かった。
『今度の日曜、どっか行こうか』
「えッ??」
『映画でもスケートでも水族館でも』
「ぅ…ん。映画かな」
そう言って蘭は、悲しい顔を隠すように笑った。
だけど俺は、その意味に気付いてあげられなかった。
次の日、電車のドアが開くと蘭の姿は無く、のぞみサンが一人で入ってきた。
『風邪もうイイんだ??てか蘭は??』
「……風邪だって」
『今度はあいつが風邪かぁ。のぞみサン、俺の大事な彼女に風邪移さないでよ』
俺はちょっと冗談っぽく言ってみた。だけどのぞみサンは静かに、
「うつすワケないじゃない」
そう言って、暗い表情で俯いていた。
(まだ具合悪いんかな)
「あのさ、日曜は蘭、無理だと思う」
(え??あいつそんなに具合悪いのか??)
そう問おうとしたら、のぞみサンは真剣な、今にも泣きそうな顔で、
「でももしあの子がデートに来ても、絶対に無理させないで!」
『んなの当たり前だ』
「絶対よ!絶対だからね…」
目に涙をいっぱいにためて、俺の目を見て言った。
俺は、その涙のワケも分からなかった。
それから2人は、姿を現さなかった。
蘭の携帯に電話しても、電源はずっと切られていた。
俺は待ち合わせ場所と時間を、メールで知らせた。
そしてデートの約束の日。
待ち合わせ時間は1時とメールしたケド、今は3時。
(蘭…やっぱ具合悪いんだろうな)
そう思っていると、遠くから見慣れた女の子が俺の名前を呼びながら、こちらに近づいてくる。
そして俺は笑顔で手を振る。
何だかとても幸せな気持ちになった。
「ごめんねッ、2時間も待たせちゃって…」
そう言って手を合わせて謝る蘭の姿が、一瞬儚く見えた。
不安に駆られ、自然と蘭を抱き締めていた。
『だいぶ痩せたな…もう大丈夫なん』
「もう平気。お待たせ」
『待ってねーょ。俺も今来たとこ』
そして俺たちは笑い合った。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
2時間後、蘭は苦しそうに息を荒げ始めた。
『大丈夫か!?』
「うん、ちょっと休めば」
蘭はまた苦しそうに返事をすると、
ピピッ ピピッ ピピッ
と、蘭のバッグの中から電子音が鳴った。
「お薬の時間みたい」
そう言って、多量の薬の袋を取り出した。
『飲み物買ってくるよ』
ガコンッ
俺は自販機のお茶のボタンを押しながら考えていた。
(あの薬、全部飲むのかよ)俺が知る限り、普通の風邪じゃあれほどの量の薬は服用しない。
蘭は何をそんなに耐えてるのか。
体調はどれくらい悪いのか。
ホントにただの風邪なのか??
俺の頭の中はハテナで混乱してた。だけど、疑問が有り過ぎて何から聞けばイイのか分からず、結局何も聞けなかった。