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Kaleidoscope kurebaiiyo
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Kalaidoscope Syoukaishite-1

細長く、つるりとした青いガラスの一輪挿しに、赤紫色のカラーを一本飾る。これからは、毎日花を絶やさないようにしたいな。枯れたら新しいものを買ってきて。
次は食器類、と瀬戸物の入った段ボールを開けようとすると、ドアが開いて環が入ってきた。
「この家、リビングは広いのに、なんでまた嶺と同じ部屋なの?」
新しい家の間取りが気に入らないみたいだ。
「これがマンションってもので、それが東京ってものなの」
「うわー田舎くせー。東京だって同じ日本なんだよ!」
言い放ってまた部屋の片付けにいく。

大学に受かった。第一志望の東京の大学に。
母は最初、金銭関係の問題で不満を言ったが、環達も一緒だと言うと、すぐに部屋の下見の日取りを決めた。邪魔者がいなくなるから。とことん終わってる。
結局、住む場所は練馬になった。大学まで電車で一本だ。部屋は三つでキッチンとお風呂、オートロック付きで新しくてきれい。
家賃はやはり高いが、4人で住んであげるわけだからその値段で譲らなかった。
弥玖も嶺も、引っ越すことに反対しなかった。環と弥玖は転入をし、嶺は東京の高校を受験した。
どんな生活になるのか誰も想像がつかない。でも、今までの生活よりマシなことは、みんなが分かってる。


新学期はあっという間に始まって、すさまじい速さで日々が送られる。気が付けば、もう6月だ。
東京の夏は確かに暑いが、日陰に入ればさわやかな風が吹く。それに比べて、地元の夏はもっとねっとりしていた。
あたしは、高校の時から決めていたバドミントンのサークルに入った。本格的じゃないところが楽でいい。
「天梨、今日ご飯食べて帰る?」
「んーん、先帰る」
同じサークルの朋花が夕ご飯を誘ってきた。用具を片付け終わったみんなも集まる。
「天梨ってあんまし一緒に遊んでくれないよね」
「昼ならいいんだけど、夜はご飯作らなきゃなの。親いなくってさぁ」
 みんなの顔がいきなり陰る。
「ちがうの、親は超元気なんだけど、あまりにも仲が良すぎるから出てきてあげたの」
「はぁー? 複雑だねー」
 大抵の人は、この話をすると、意味が分からないって顔をする。そこに、同じく練習を終えた男子がやってきた。
「天梨、今日行くの?」
 舜祐だ。同じ専攻で同じゼミ。
「家庭の事情だってー」
朋花が代わりに答える。
「お前、カワイソウな家の子なの?」
このストレートな質問は、知らない人が聞いたら呆れるだろう。でも舜祐に悪気はない。あたしはこの明快で皮肉混じりな物言いがけっこう好きなんだけど、色んなところに敵を作りやすい。
「ある意味ね」
 あたしも気軽に答える。
「天梨ちゃん、また来ないの?」
2年の片岡先輩だ。とても整った顔つきをしていて、(女の子の)面倒見もいいからモテる。
こんな感じで大学生活はとても楽しい。自由で何をやってもうるさく言う人なんていない。これが去年一年の頑張りの成果だと思うと、素直に嬉しい。




新しい学校の気に入っているところは、プールが温水なとこ。屋上が開放してるとこ、学食があるとこ、男も女も優しいとこ。
制服も学ランからブレザーに変わって、苦手だったネクタイも30秒で結べるようになった。
みんなが名前で呼ぶようになって、たまにクラス外の女子が教室まで見にくるようになって、俺は高校生活で一番楽しいらしい学年を満喫している。


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