Animal Rain☆-1
朝起きたら空から猫が降っていた。
「……なんだこりゃあっ!?」
……猫だ。紛うことなき猫だ。
本当に猫が空から降ってきている。にゃーすかにゃーすか鳴きながら。
「どうなってんだ……?」
俺が窓を開けたまま放心していると、兄の武人(たけと)が部屋に入ってきた。
「朝っぱらから何叫んでんだ弟よ。っていうかお前、学校遅刻するぞ?」
「たけっ! ちょうどよかったどうなってんだこれっ!? 何で空から猫が!!?」
俺の心からの質問に、兄貴は眉間にしわを寄せながら答えた。
「お兄ちゃんと呼べお兄ちゃんと。年長者は敬えっていつも言ってるだろ?」
「そんなことどーでもいいだろがっ!!」
「……お前、ちゃんと天気予報見たのか?」
兄貴はそう言うと、俺の部屋の隅にあるテレビの電源を入れた。
すると、画面には猫マークがいっぱいの天気予想図が。
「今日の天気は猫時々くもりだろうが」
俺は何か夢でも見てるのか……?
学校に行く準備をして家を出た俺は、玄関先で降ってくる猫を眺めていた。
降ってきた猫はアスファルトに着地すると、すぐに消えてしまうようだ。
道路にに猫が大量放置されるなんてことはなかった。そんなことになったら、保健所の役員が大忙しだが。
猫は降ってくるときにひっかいてくるから、肌をやたらと出さずに必ず傘を差して行ったほうがいい。
出かけようとしたときに兄貴が言っていたことを思い出して、ため息をついた。
とにかくもう学校へ行こう。このままじゃ本当に遅刻だ。
俺は勇気を出して傘を差し、猫が降ってくる外へ一歩踏み出した。
「……なんか雨に似た感じだな……」
猫が降ってくるんだからもっと傘に衝撃がくるかと思っていたが、雨のときとほとんど感触は変わらなかった。
それでも傘にあたる音は『ぱらぱら』ではなく『ぼすんぼすん』だが。
あれこれ考えていると、いきなり突風が吹いた。
気を抜いていた俺は突風に流されて思わず傘を離す。
「あ……っ」
気づいたときにはもう手遅れで。
俺は空から降ってくる猫たちに体中ひっかかれた。