リング・シルバー-1
引き出しの奥。
取り出した小さな小さな、小箱
中身は見ずとも分かっている。
1年前、しまいこんだペアリングの片割れ
まだ大切に、箱に入っている。
あの時は、「幸せ」は自分以外の人にだけ降り注ぐのだと思っていた。
皆が幸せでも、私には決して手に入らないものだと…
根拠もなくそう思っていたんだ。
去年の夏、お祭りで、
あの子とあなたが歩いているのを見た。
目の前が真っ暗になった。
それ以来封印したシルバーリング
その輝きを見るのが辛くて、
誰も信じられなくなって…
けど、
今ならこの箱をあけられる
そう、思えた。
箱を開けると、中にはあなたに貰ったリングが入っていた。
けど
あの時のままの姿…ではない。
茶色く濁り、銀色の輝きが失われている。
悲しいね。
シルバーって放っておくとこんな風になるなんてこと、知らなかったんだ。
そして気づかされた。
あなたとの日々、嫌なことばっかりじゃなかったこと…
忘れたくて、思い出さないように蓋をして、でも私の思いは汚れていくばかりだった。
私は研磨剤を取り出し、リングを磨く