投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

光の風の最初へ 光の風 197 光の風 199 光の風の最後へ

光の風 〈風神篇〉前編-12

「皇子。」

判断を求める声が千羅から投げ掛けられる。

「探すぞ。」

足早にリュナの部屋から二人は去っていく。まだ近くにいるはず、早足がいつしか走っていた。

頭の中で警戒音がなる。

確実に不穏な空気が城の中に流れていた。嫌な予感がして仕方がない。

「千羅。」

「はい。」

「頭の中で警戒音がなっている。」

本来なら足が止まりそうな話だが、足は進めながら二人は会話をした。カルサの言葉の意味を千羅は深く理解している。誰よりも強く分かっている。

「分かりました。」

低い声が靴音よりも響く。

「決して離れません。」

強い言葉で響く。千羅の言葉は誓いだった。もう二度と同じ失敗はしない、もう二度と同じ思いはしたくない。

あの時そう強く願い、誓った。

「そうか。」

そう応えたカルサの表情は穏やかだった。安心を得られた、そんな気持ちの表れだった。

「瑛琳をリュナの方に戻しますか?」

「いや、あっちの方が気になる。」

リュナは何が何でも見つけだす、そうカルサは続けた。そうですね、千羅がそう答える。

「約束をしたんだ、守ると。」

たとえ今、目の前に居なくても鮮明に映るリュナの姿。彼女に伝えた言葉か、自分に誓った言葉なのか。

「絶対に危険な目に合わせないと。」

もし危険な目にあっても。

「必ず見付けだして、守ると決めたんだ。」

確かな足取り、彼の意志は強く彼自身を支えていた。その思いの繋がる先を彼は気付いているのだろうか。千羅は確かめたくなる。

「でしたら、もしもを考えず生きぬかねば。生きていなければリュナはもちろん何一つ守れません。」

カルサは自分の言葉の深さを気付いていなかった。千羅によって知らされた意味にはにかむように笑う。

「そうだな。」

何かを守るためには自分の命は必要不可欠、リュナを守り続けることは己の命も守り続けることになる。めぐりめぐって、今のカルサを生かし動かしているのはリュナの存在だった。

同じ様に、今のリュナを生かし動かしているのはカルサの存在だった。

誰もいない廊下を彷徨うようにリュナは歩いていた。目は虚ろか、意識がはっきりしているようには見えない。


光の風の最初へ 光の風 197 光の風 199 光の風の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前