光の風 〈風神篇〉前編-11
ドクン
心臓から爪先へ。
ドクン
心臓から指先へ。
ドクン
心臓から頭の先へ。
1つの波が伝わるごとに塗り替えられていく。赤から青へ、白から黒へ、そもそもの組織を変えていくような感覚、身体の小さな細胞、染色体までも鼓動が生み出す波は震わせていく。
ドクン
代われ。
ドクン
変われ。
ドクン
奪われた子。
ドクン
闇を奪われた子。
ドクン
代われ。
ドクン
変われ。
ドクン
取り戻すの。
ドクン
愛しい子。
ドクン
私の可愛い娘、セレナ。
波は確実に伝わっていく。呪いがかけられていく?それとも、覆いつくすベールをはがしていくのだろうか。
光が消え闇が目を覚ます。
そして彼女は目を覚ます。
ドンドン
リュナの部屋に大きく外からの存在を示す音が響く。
「リュナ、入るぞ!」
カルサは扉を開け、彼女がいる寝室へと真っ先に足を向けた。勢い良く扉を開ける。
しかし、そこには誰の姿もなかった。
辺りを見回しても誰もいない。