冷たい情愛12-1
彼は器用に身につけている衣類を自ら脱ぎ始めた。
彼の体につく綺麗な筋肉に、私は指先を這わせる。
私はそれだけで幸せになれたが、彼はそうではなかった。
彼が…もう待てない…と無言の言葉を体全体で発しているのが分かった。
緊張と熱を発する、彼を包む空気。
彼は少し乱暴に、私の口腔を犯してきた。
彼の舌が、私の舌に乱暴に絡みつく。
彼の胸が、私の胸と摩擦を起こし…私はどうしようもない感覚に包まれる。
体がまだ…準備出来ていないのだ。
それなのに…彼は「待てない」のだ。
好き合えた喜びは、決して性的なものに直結しない。
なのに彼は、そんな私に気付かないかのように、どんどん高まっている。
彼と私の唾液は絡まり、性器の結合と同じ粘着音を発する。
私は情け無いほどにされるがままだ。
接吻とは程遠い、粘膜をまさぐり合い舌を絡めあう行為。
私の下腹部には、彼の発情の印の固い感触が圧迫してくる。
あまりにも恥ずかしく、私は必死に顔を振ろうとする。
しかし、舌どうしが絡み合っていて、それは抵抗の合図にすらならない。
彼はもっと固くなったそれを押し付けてくる。
それと同時に、左の胸の膨らみを痛い位に遊び始める。
私は自分の体をどうすることもできず、彼の発情をただ受け入れるしかない。
受け入れる…その行為が、本当は嬉しかった。
私を想い、体を求めてくれる彼。
怖がることを、止めなければ…
今、こうして体を重ねられる幸福だけを感じていればいい…
ようやく彼は、私の口腔に飽き、そのまま首筋を強く吸い始めた。
痛い位、彼は執拗に唇を押し当ててくる。
「あ…跡が…」
週明け、交わりの赤い印を首筋に付けたまま出社する訳にはいかない。
上司の片山にでも見られたら…しゃれにならない。
なのに彼は辞めてくれない。
更に強く首筋を吸ってくる。
息を吸うのに、一度唇を離しても、すぐに同じ箇所を攻め始める。