冷たい情愛12-7
胸郭は上下に大きく動き、それは私の手がもたらした彼への刺激の強さを物語っていた。
その逆に、体に刺激を加えられてから時間の経っている私は余裕そのもの。
彼を見たくて、体ごと横を向いた。
「気持ちよかった…?」
私は彼に尋ねてみた。
彼は腕をゆっくり上にあげ、上腕を自分の顔の上に置き目の表情を私から隠した。
息がまだ整わない中、彼は言った。
「ずるいですよ」
この言葉が、ひどくおかしく…私は笑ってしまった。
「気持ちよくなったくせに、ずるいって…変なの」
「途中で…やめられなかったんですよ」
彼はだるそうに起き上がり、私の下腹部に発した自分の印を綺麗にし始めた。
その時間が、私には我慢できなかった。
早く彼の胸の中に収まりたい…。
「設楽さん…を、気持ちよくさせたかったのに…」
彼は作業を続けながら、独り言のように呟いた。
「私だって…遠藤さんを気持ちよくさせたかったんです」
「普通、告白して…こういうことをするってなったら…男としては…」
彼は、私が手だけで自分を昇りつめさせたことに納得していないらしい。
いつも冷静でやり手の男が…なんだか可愛らしく見えた。
ほんの一瞬だけ…
その姿に先生を重ねたが…
少しも悲しくはなかった。
それは…たぶん…
私に本物の笑顔を向けてくれる存在がこの世に…
二人もいてくれたことが嬉しいと思えたから。