唐揚げとこいつめ-1
ある晴れた日の昼休み。屋上にて俺達は昼食を摂っていた。それはそれは平和に。
「なにかありませんか」
購買のサンドイッチをちぎりながら呟くのは俺の…敵?
いや、友だ。
「何がだ。主語を言え。おかずはやらんぞ」
「趣味ですよ。僕今趣味が欲しいんですよ」
ああ、例え仮眠をとっているところにクラッシャ食らわされても友だ。こうして自然と弁当の唐揚げを奪われても友だ。それを食べながら「定番なおかずばかりですね」といちゃもんつけられても友だ。
「サンドイッチよこせ」
「嫌ですよ。ねえ、なんかありませんか、趣味」
あ、流したなこの野郎。
しかしここで粘ってもたいして意味がなさそうなので諦めて話に乗ってみよう。
「音楽鑑賞でもやってみたらどうだ」
「君はそんなもんが趣味だったんですか。部屋でじーっとカセット流すんですか。何が面白いんですかね」
却下らしい。ちゃっかり俺の一趣味を否定するな。で、カセットで音楽聞くのかおまえ。まてまて現代高校生。
「ゲームは。始めるとしばらくはまるぞ」
「趣味一人でゲームとか暗くないですか。絶対そのうちシミュゲーとかはまっていくんですよ。大丈夫ですか?」
そんなのほんの一部だろう。ちょっと誤解してるんじゃないか?そしてちゃっかり俺を馬鹿にするんだな。
「テニスとか」
「ああもうスポーツ→とりあえずテニスっていう想像力がなんかですよね。寒いし外したら痛いじゃないですか」
なんだそのどこまでもわがままな理由。前半俺をけなしたいだけじゃないのか。これはちょっと怒ってもいいんじゃないか。
「そんなこと言ってたら趣味なんて永遠に発掘できないと思うんだが」
「君の今までの提案がたまたま駄目なものだったんですよ」
「俺が提案するものはこれからも否定されそうな気がするんだが」
「やめて下さいよ自意識過剰とか被害妄想とかマジ困るー」
ため息と最後の語調ら辺りがものすごい腹たつなあ…。
「謝ってあげますからピクついてるこめかみ何とかして下さい。気持ち悪いです」
いろんなことが矛盾しててもここは冷静になってやろう。話が進まん。
「趣味なんて別に捜してやるもんじゃないと思うがな」
最後の玉子焼きを口へと運びながら言ってみる。俺の正直な考えだ。
ちらと隣を見るとやつは真面目な顔をして俺を見ていた。
「なんだよ」
尋ねると数秒黙ったあと俺に顔を近づけてきた。
…待て、俺にそんな趣味はない!!お、おまえは友達だと思ってたんだぞ!
耳元で顔が止まり、唇が開いた。
「ニヒルぶらないで下さいよアヒルみたいな顔して。間抜けな面に少し見入ってしまったんですが、まさか変な勘違いなんてしてませんよね」
…この野郎唐揚げ返せ。