投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

10年越しの約束の最初へ 10年越しの約束 62 10年越しの約束 64 10年越しの約束の最後へ

10年越しの恋心-7

夢に決まってる…そんな弱気な事を考えていると、不意に聖の声が耳に届いた。
「何か…有ったのかなぁ?それに、なんで急に、私と松田君が付き合ってるのかなんて………そう見えてるの?」
俺の目の前で、聖が何やらブツブツと…百面相しながら呟いている。
「すっごい勘違い!ただ仕事で一緒に居ただけなのにっ!」
(もしかして聖…口に出してるの、気付いてないのか?)

「聖…」
「ほへっ、は、はいっ!」
名前を呼ぶと、急に聖は驚いた様な表情を浮かべた。
その反応があまりにもリアルで、そして可愛くて…俺の胸に、どんどんと温かい感情が込み上げて来る。
触れたい…そんなもんじゃきっと、この感情は治まらない。

「聖…ごめん……」
俺は聖を抱き寄せた。
腕の中の聖が、逃げようともがいている。
「こっ、光輝君!?」
「ごめん…少しだけ…このままで……」
聖を抱き締める腕に、強く力を込めた。伝わる体温があまりにも心地好くて、もっともっと欲しい。
自分ではもう、自分自身をコントロールする事が出来ない。
腕の中の愛しい存在を離したくない。

俺はどれだけ聖が好きなのか…俺ばかりが、どんどん深みに落ちている様な気がする。
聖が俺を好きとは限らないのに、自分勝手に抱き締めて…聖はどう思っただろう?
聖の気持ちが知りたい。俺のこと…どう思ってるのか……

その時、不意に聖の腕が背中に回された。
これが答えとでも言わんばかりに、俺をギュッと抱き締めてくれる。
俺の胸元に頬を刷り寄せて目を伏せている姿は、とても幸せそうで…なんだか物凄く、安心する事が出来た。

今となっては、博也や噂に振り回されていた少し前までの自分が馬鹿馬鹿しいとさえ感じられる。
きっと聖だって、俺と同じ気持ちでいてくれた筈だ。
だって、10年もの間…俺との約束を覚えていてくれたんだから……

俺は、更にきつく聖を抱き締めた。
聖の存在を近くに感じながら、心の中が不思議なほどに穏やかになって行くのを感じていた。


10年越しの約束の最初へ 10年越しの約束 62 10年越しの約束 64 10年越しの約束の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前