高校二年の三月に-1
私達は別れた。
結局、何が原因だったのかは、今となってはよく分からない。
知らないうちに彼の言葉は、私にとって
実に不可解なものとなっていた。
歩み寄らなくてはと思ったけれど、
理解しなくてはと思ったけれど、
それをするにはあまりにも、彼は静物的な印象を私に与えた。
困惑する私を前に、彼は何の手がかりも私に与えてくれなかった。
ひょっとしたら彼のベクトルなど
端から私には、むいていなかったのかもしれない。
サインを見落としてしまう私など
彼を相手にしたのが間違いだったのだ。
だからもうすぐ
私達は別れる。
相変わらず空白は埋まらぬままだけれど
考え直すことなど何もない。
私などいなくとも
彼を選ぼうとする人は、たくさんいる。きっと。
目を落とすと、彼に縛られない自分の名前。
彼が私の名前を目にすることはもうないだろう。ずっと。
私は秒針を前へ前へと押し出すように
時計の文字盤を見つめた。じっと。
・・・・・・キーンコーンカーンコーン・・・。
彼との最後の思い出が、後ろの女子の手に渡る。
テスト用紙が全て回収されおわったところで、
「やったー!やっと数学から開放されたー!」
そうして私達は別れた。
私達の相性は、100点満点中、32点だった。