ぬくもりに溺れて-2
少女が寝静まってからそう時間は経っていない、夜明け前のことだった。
少女の眠るその部屋には、少女と男と、もう一人別の人物がいた。
「頭、どういうつもりだ。貴様は目が見えずとも歩くことは出来よう。ましてや百鬼夜行には毎夜毎夜参加しておったではないか」
「……いつから盗み聞きをしていらっしゃったんですか? ぬらりひょん御爺様」
もう一人の人物、それは後頭部の大きな老人だった。青色の高価そうな着物を身に纏い不機嫌そうに顎髭を撫でている。
「朔藍には手を出すな。わかったか」
「どうでしょう。最近は御嬢様を食べたくて食べたくて仕方ないのです。朔藍様には人の血が流れているからでしょうか、美味しそうな人肉の香りがします」
「その時、貴様の命は無いと思え」
「……冗談です。本気になさらないでください」
もう一人の人物が部屋から出て行くと、男はそれっきり口を開くことはなかった。
ただ愛おしげに、傍で眠る少女の頬に舌を這わせた。