社外情事?5〜難航のプレゼントとこめられたコトノハ〜-2
「…誠司さん?」
「み、湊さんっ?」
僅かに冷静な声と、素っ頓狂な声が、重なった。
誠司とぶつかった相手は、湊だったのだ。
「奇遇ですね…こんな所でお会いするなんて…」
湊は意外そうに呟くと、差し伸べられた誠司の手を臆する事なく取る。手のひらに重ねられた柔らかい暖かみに、誠司は内心どきどきしながらも、しっかりと握って引き上げる。
「そ、そうですね」
握った手を離す。しかし離れない。
湊が手を握ったままなのだ。
「…えっと…」
誠司の心拍数が上がる。同時に、どこか居心地の悪さを感じてしまう。
「…湊さんは、どうしてここに?」
そこで、気を紛らわすために適当な質問をしてみた。すると、急に気持ちが落ち着いてくる。
「私、ですか?」
そして、湊が問いかけに首を傾げているさまを見ていると、波打つ気持ちがますます平静へと静まっていく。
と、そこから大して時間が経たないうちに、彼女は口を開いた。
「ウインドウショッピングです」
「…ウインドウショッピング?」
告げられた答えに、誠司は思わず復唱。頭に疑問符が漂う。
一方、誠司が困惑気味である事に気付いた湊は、しかし普通に言葉を続ける。
「買わずに見るだけ、ですね。私、展示されてる品物をいろいろと見て回って、あれこれと考えるのが好きなんです」
「…なるほど、そういう事ですか……買ったりとかは、しないんですか?」
「…それを言われると、少し困ってしまいますね…」
苦笑する湊。
「買う時はありますけど…大して欲しいわけでもなかった、というのは嫌ですから、買うのは慎重に、ですね」
「慎重に、ですか…なんとなくわかる気がします。買う以上は、あまり損な買い物はしたくないですから」
彼女の考え方に、誠司は頷く。それを聞いて湊は、「そうなんです」と言ってから、ふとある疑問を口にする。
「…ところで、誠司さんはどういったご用事で、こちらへ?」
それは、誠司が最初にした質問と、ほぼ同じ。
「え?あ…」
答えるのは簡単なはずなのに、何故か詰まる誠司。理由が「恋人へのプレゼントを買うため」だから、躊躇してしまったのだろう。
そして、しばしの空白の後――
「…知り合いへのプレゼントを、買うため…ですね」
出てきた答えは、いかようにもとれる言葉。
それはおそらく、「玲との関係を他人に知られたくはない」という無意識の結果。
「…知り合いに……誕生日か何かですか?」
対する湊は、特に訝しむわけでもなく、その理由を素直に信用する。それは誠司の良心を、嘘をついたわけでもないのに少しつついてきた。
だが、彼は普通に振る舞い、その小さな痛みを包み隠す。
「誕生日とは、ちょっと違うんですけど…まあ、そんな所です」
「そうなんですか…」
そんな誠司の内心に気付く素振りなどなく、湊は微笑んだが――
「…あれ?プレゼント、ですか?」
ふと、頬に手を当てて、湊は思案気な顔になる。
「…うーん…」
そして辺りをきょろきょろと見回しながら、唸る。
もしや、ばれてしまったか――小さな後ろめたさがある誠司は、彼女のその動きに思わず怯んでしまった。
が、それは内心の事。表面には毛ほどにも出さず、彼女の様子をうかがう。
――そして、しばし言葉が尽きる。
その後、湊が誠司に視線を向けた。
「…誠司さん」
少しだけ真面目な口調で呼びかけ、内心びくびくしている誠司の視線をこちらに向かせる。
「な…何ですか?」
誠司は湊と視線を合わせながら、どうしたのかと問いかけてみる。それに対し湊は、一拍置いて口を開き――