やっぱすっきゃねん!U…D-1
ー日曜日ー
秋晴れの9月下旬。
天候にも恵まれ、大会は1試合を残すのみとなった。
優勝決定戦。
青葉中学 対 東海中学
最後に残ったのは、どちらもライバル視する実力校同士。どちらも地区大会での雪辱に燃えている者同士。
どちらも、決戦を前に静かに闘志を燃やしていた。
1回戦を勝った20校から得失点差で上位16校が選ばれた。先週までは1日1試合だったが、日程から土曜日、日曜日は1日2試合を消化する必要がある。
チーム力はもちろんだが、選手達の気力、体力が雌雄を決する。
青葉中は1回戦以降の3試合を圧倒的な強さで勝ち進んだ。
対する東海中も1回戦、魁正中との対戦は逆転勝ちという危ないスタートだったが、その後は順当に勝ち残って来た。
お互いが午前中の準決勝を勝ち上がり、午後2時からの決勝に備えていた。
「いよいよだ!何だかドキドキするね」
上擦った声で、佳代は直也や橋本などの仲間達に声を掛けた。
しかし、
「カヨ。あれ見ろ」
となりにいた山下達也が佳代の手を引き、アゴで方向を指した。
その先を目で追うと、3年生達は円陣を組んで押し黙っている。
「先輩達は決勝に向けて集中してるから、あまりはしゃぐなよ」
「は〜い」
球場外の隅に設けられた青葉中学のテントは、ちょっとした有名屋台の如く大勢の人に囲まれていた。
部員が約50名。これに学校関係者や生徒会、選手の親御さんを含めて総勢120名余り。
皆、選手達を気遣い、静かに時が来るのを待っていた。
周りを〈応援団〉に囲まれた中、監督の永井は、選手の円陣に加りミーティングを始める。
彼は笑顔で語り出した。
「いよいよ最後の一戦だ!
皆、ここまで良く頑張ったな」
永井はそこで一端、言葉を切り、ゆっくりと選手の顔を見回して再び口を開いた。
「…優勝、奪りに行くぞ……」
低く、しかし、通りの良い声で永井は言い放つ。その目に力を込めて選手に語りつつ、己にも言い聞かせていた。