やっぱすっきゃねん!U…D-6
「どんなアドバイスですか?」
一哉は右手でアゴを撫でながら、
「そうだな…身体に疲労の素を溜まり難くする。また、溜まっても早く分解させる」
「…そ、そんな事出来るんですか?」
佳代の目が輝いた。一哉は頷くと、
「色々あるが、アミノ酸やクエン酸、ブドウ糖に酸素などを摂る事。後は、マッサージやストレッチを入念にやる事だな……」
黙って聞いていた佳代は、身を乗り出すと、
「それ!私に教えて下さい」
一哉はちょっと考えると、
「そうだな。来週には持って来よう」
「ありがとうございます!」
声を弾ませる佳代。その時、後から声が掛かった。
「カヨッ、どうだ?調子は」
予想しない事に、慌てて振り返る佳代。そこには、満面に笑みを湛えた榊が立っていた。
「か、監督!…」
弾かれたように立ち上がり、〈キヨツケ!〉のポーズを取る佳代。
対して榊は右手をひらひらと振って、
「オイオイ、オレはもう監督じゃないぞ。いいから座れ」
そして一哉に近寄り、
「久しぶりだね藤野君」
一哉は榊に頭を下げる。
「ご無沙汰してます。こちらへ応援に?」
「いやいや!今、着いたもんだから勝手が分からなくてな。
それに、青葉中も気になってね」
一哉が声をあげて笑う。
「ハハハッ、青葉中も気になるし、東海中は勤めてある学校だし。榊さんとしては複雑な心境ですね」
榊は苦笑いをしながら、
「…まあ、そんなところだな」
「今日は信也が先発らしいですよ」
一哉の言葉に、榊は安堵した表情で、
「…そうか…そこまで回復したのか…」
「ええ、それに走り込みを増やしたおかげでスピード、キレとも増してます」
一哉はブルペンを指差した。榊は食い入るように、信也の姿を見つめる。
「どうです…?」
感嘆のため息を吐く榊。
「確かに…良いな……」
榊は一哉の顔を見つめた。