やっぱすっきゃねん!U…D-4
1塁ベンチ。
前に並んだ選手達に、永井は先発メンバーを伝えていく。
「…3番、ピッチャー信也」
永井は信也の顔を見つめ、
「…最後はオマエで勝ちたいんだ。やってくれるか?」
「行きます!」
永井の言葉に、信也は力強く答える。待ち望んでいたように。
そんな姿に永井は頷いた。
「続けるぞ。…4番、キャッチャー山崎、5番、ファースト菅…」
永井の言葉だけが、ベンチに響いていた。
*****
「エッ!じゃあ、ナオちゃん行ったの?」
1塁側スタンド。
佳代は有理の言葉に喜びの表情で、カン高い声をあげる。
「シッ!声が大きいわよ」
慌てて口を手で塞いだ佳代。
有理は困った顔で見つめていたが、俯き加減に言葉を続けた。
「後からナオちゃん見てたら、何だか焦れったくなっちゃって…」
フッと顔を上げ、遠くを見つめると、
「…つい、押しちゃった」
佳代の目に映る有理は、この上なく良い顔で輝いていた。
佳代もつい、笑顔になる。
すると、有理が佳代を見つめ、
「私達も自分の時は、ああなるのかしら…」
「…う〜ん、どうかなぁ?」
腕組みをして天を仰ぐ佳代。
答えながら、別の事を思った。
(…ユリちゃんを好きなヤツなら真後にいるんだけどなぁ……)
その時、頬を上気させ、惚けた表情で尚美が現れた。
無言のまま、終始ヘラヘラとしながら佳代達の席に近づく。佳代も有理も俯いたまま何も言わない。
尚美が腰掛けた後、2人横目で表情を伺った。
(…ナオちゃんのこんな顔、初めて見た……)
佳代と有理は、お互いに顔を見合わせるとニヤリと笑った。
*****