やっぱすっきゃねん!U…D-2
円陣の周りで1、2年生達は静かに聞いていたが、
「…カヨ…オマエ……」
山下達也は佳代を見て目を見開いた。泣いていたのだ。
「…エヘヘ……」
笑顔を作って涙を拭う佳代。
達也は心配気な表情で、
「どうしたんだ?」
「何だか…胸が詰まって。最後の試合で…羨ましいなって……」
そう言って顔を拭くが、涙は後から後から溢れて来る。
「…まったく……」
達也は呆れ顔でため息を吐くと、自身のバックからタオルを取り出し、俯く佳代の頭に被せた。
「それ使え…」
達也はそれきり何も言わない。
佳代も〈ありがと〉と言ったきり、しばらく涙を拭っていた。
*****
球場入り10分前。〈応援団〉は、先にスタンドへと向かった。テントには、選手達と永井だけとなった。
すると、
「お疲れさまで〜す!」
カン高い女の子の声がテントに掛かる。選手達が声の方を向いた。そこには、尚美と有理を連れた藤野一哉の姿があった。
「コーチ!来てくれたんですか」
永井が笑顔で出迎える。
「いよいよですね!監督」
一哉も笑みを湛えて永井に近寄り、帽子を取って頭を下げた。
「ひとつ、選手達に喝を入れてもらえますか」
永井の頼みを、一哉はふたつ返事で引き受け選手の前に立つと、
「整列!」
選手達は、ズラリと横に並んで姿勢を正した。
日頃の鬼コーチぶりが伺える。
一哉は、日頃とは違う丁寧な口調で語り掛けた。
「君達にとって、中学最後の試合を迎えた。それも、決勝という最高の舞台だ……。
これを体験できるのは、日本中でもわずかな数しかいない……」
一哉は語り掛けながら、選手ひとり々の顔を見つめて行く。
「…さらに勝ち残るのはその半分だ。だったら…意地でも奪い取ってこい!」
一哉は帽子を取り、選手達に深く頭を下げた。
「整列!」
キャプテン信也が号令を掛ける。