やっぱすっきゃねん!U…D-17
「ちょっと、って何だ?」
不思議な顔で直也は佳代に訊いたが、彼女は〈ちょっと…〉とだけ言って部屋から出て行ってしまった。
「…何だ?アイツ…」
祝勝会が終り、各々が帰路に着く。直也は当然、父親のクルマで信也と一緒に帰ろうとすると、
「ねぇ、ナオヤ。家まで送ってよ」
佳代が自転車で近づいて来た。
(…なんだ?コイツ今日に限って…)
不可解な顔で見つめる直也。
しかし、信也にその旨を伝えると、佳代と一緒に帰り出した。
薄暮の中、黙って帰る2人。
「アンタの兄貴。やっぱり凄いや…」
今日は佳代が沈黙を破った。
「…ああ…最終回…身体が震えて止まらなかった…」
静かに、しかし、興奮気味に話す直也。その目は燃えていた。
そんな表情を見て佳代は微笑むと、俯き加減で、
「私達もやれるかね?来年…」
直也は頷き、力強く言った。
「やれるかじゃない。やるんだ」
並んで帰る2人。
薄暮はいつしか闇となり、街灯がまばゆく輝いていた。
ー夜ー
父親と信也を乗せたクルマが、
自宅へと帰って来た。
荷物を持って玄関へと近づいた時、暗闇から何かが現れた。
信也がその方向を見て、驚きの表情を見せる。
「君は…」
それは尚美だった。
俯き、思いつめた表情で彼の前に立っていた。
「…信也…」
父親が玄関口で信也を呼んだ。
信也は振り向くと、〈先に入ってて〉と言って、尚美を見つめた。
「…確か、安田さん?だよね」
尚美は無言のまま信也に近づくと、顔を上げて固く結んだ口を開いた。
「…今日、試合を見ました…素晴らしい試合でした…」
信也は戸惑いを隠すように、笑顔を作り、
「ありがとう…」
尚美が続ける。その唇は震えていた。
「…ずっと見て来ました。アナタだけを……でも、今日の試合で…改めて…」
深く息をする尚美。迷わず、次の言葉を放った。
「…好きなんです……」
夜。秋の冷気が辺りを包む頃、尚美の目は憂いを帯て、信也を見つめていた。
…「やっぱすっきゃねん!U…D」完…