ヒトナツD-2
***
「久しぶり!」
「はい、お久しぶりです」
桜と駅で待ち合わせた。
今日は二人で街をブラブラと歩いてみることに。
まあ、渚と毎日のようにそうしてるんだろうが、桜はたくさん笑っていた。
「よし…よし…よし!」
「きゃー!」
ゲーセンに入った俺たちは、射撃ゲームやレースゲームなどを楽しんだあと、クレーンゲームで子犬のぬいぐるみをゲットした。
「かなーり無理したな俺」
「でも嬉しいですよ。大切にします」
「よかった」
桜さん、俺、財布の中がピンチです。
ま、桜の笑顔と引き換えならそれでもいいか。
続いてゲーセンの向かいにある喫茶店で休憩する。
やっぱり桜となら、こういうのんびりしたデートがいいわー。
二人ともブレンドコーヒーを注文し、まったりと過ごしていた。
「桜、今日は楽しんでる?」
俺はずずっとコーヒーを啜りながら言った。
「はい!ゲームセンターなんか行ったことなかったから、すごくはしゃいじゃいました」
桜はニコニコしている。
「ゲーセン行ったことないの?」
「はい」
箱入りだからそういうのダメなのか?
「じゃあ普段友達とはどんなとこで遊ぶの?」
「……友達ですか?」
ふっと桜の表情が曇る。
「うん」
「……友達、いないから」
「は?」
桜に、友達がいない?
「なんで…」
キャンパスでの桜は、いつも大勢の女の子に囲まれて歩いていた。
「あの子たちですか?違いますよ」
見抜かれていた。
「彼女たちは、私を利用したくてくっついてるだけなんです。携帯の番号もアドレスも何も知りません」
なるほど。
キャンパスでは“お嬢様”なんてレッテルをはられている桜だから、寄ってくる男のおこぼれをもらうために……。
あ、ヘタレでもそれぐらいわかります。
「そっか」
桜はきっと、中学や高校時代もそうやって過ごしたのだろう。
俺はそんなの耐えられないな。
胸がキリキリと痛んだ。
「…でも」
桜は泣きそうな顔で言った。
「ん」
「今は健吾さんがいてくれるし、渚さんっていう友達ができた」
「…っ」
泣きそうになった。
こんなヘタレでちっぽけな俺でも、大切な人を助けられるんだ。
本当に桜を助けることができてよかった。
「桜」
「はい?」
「お前には俺が…俺と渚がついてる」
「…うんっ」
桜は涙混じりで最高の笑顔を見せた。