卒業-1
足が錆びた机
黒ずんだ床
古ぼけた教科書
誰もいない教室は、こんなにも静かなのかと驚いた
拭いても拭いても綺麗にならなかった黒板には、様々な寄せ書きがされている
卒業
たった二文字の漢字
だけど、それは人生に大きな意味をもっている
机を見ると、落書きがされていた
この席に座っていたアイツは、遠い街に引っ越すと言っていた
その後ろの席にいた人気者のアイツは、実家を継ぐと言っていた
みんな、絡まった糸がほどける様にバラバラになっていく
きっと、この先この場所に、みんなが集うことはない
もしあったとしても、それは別の俺たちだから
時の止まった教室は、それでも今にも動き出しそうな感じがして
下唇を噛む
もう一度ここが動き出した時には、ここに俺たちはいない
時計の音は規則正しく時を刻んで、まるで追いたてられるような錯覚に陥りそうになる
何かを残したくて、俺は鞄からペンを取り出した
机に名前を刻んで教室を出る
靴を履き替え校門まで歩くと、気の知れた仲間達が待っていた
後ろからチャイムが鳴ったが、振り返らずに歩を進めた