割れた卵-2
『なに?』
行くな。
その一言がどうしても言えなくて、ただ僕はもう一度うつむく。
発車のベルが鳴り響く。
ドアが閉まって、彼女の顔しか見えなくなる。
「……じゃあな」
きっと聞こえてはいないだろう。それでも、何かを言いたかった。
彼女は口の動きでわかったのか軽く頷いて見せる。その瞬間に、彼女の顔は横へと流れていった。
卵の殻が破れ、僕らの世界は終わりを告げた。
事実をまだ認めていない自分に笑ってしまう。だけど、視界はぐちゃぐちゃだった。
僕らの卵は壊れてしまった。
「……くっ…ぐ……」
僕らは雛になれなかった。