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未来への扉
【SF その他小説】

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未来への扉〜Prologue〜-1

ー某所ー

なだらかな丘陵地帯を右手に仰ぎ、どこまでも続く真っ黒な道。左手には崖下の海が眼下に広がり、その手前のガードレールが帯となって流れていく。
鉛色の雲は空を覆い、海と同化していた。一見すると冬空の形相を表しているが、この地方では〈夏〉と呼ばれる季節以外、寒い気候に支配されていた。


黒い道を進む1台の〈飛ぶ〉クルマ。

「やっと見えたか……」

男が呟いた。

ブロンドの髪をケネディカットにまとめ、ネイビーのスーツに身を包んだ様は、ウォール街のビジネスマンを思わせる。
男のブルーの瞳には、ようやく目的地に着いたという安堵感に溢れていた。

丘陵地の先に見える白い建物。円筒形のそれはガスタンクに酷似している。クルマは、道の途中にある丘陵地に向かう道へと方向を変えた。

みるみるガスタンク状の建物が迫ってくる。その規模は近づくにつれ驚くほど巨大なモノだった。

クルマは建物のそばに滑り込む。

コンクリートの白壁が遥か高くそびえ立ち、緩やかな曲面を成して続いていた。壁には窓らしき開口部も無く、間近で見た様子はガスタンクと言うより原子炉のドームを連想させる。

「さて…」

男はクルマから降りると、目の前のドアーに近づいた。おそらく建物唯一の開口部であろう。そばには、数センチ四方の黒い板ガラスの様なモノが埋め込まれていた。彼はそこを覗き込む。すると、わずかな電子音を残してドアーが開かれた。

放たれたドアーを男は潜った。面前には階段が見える。が、それは階上へは続いておらず階下にだけ伸びていた。
男は戸惑いの表情も見せず、階段を降りて行く。わずかな光りの中、慣れた足取りで。

最下階に降り立った。目の前には再び扉が見える。さも、彼の行手を遮るように。
男はポケットからカギ状の物を取り出し、扉そばの穴に差し込んだ。


ギ…ギギ…ギギギィィ…


扉は動くのが億劫とでも言わんばかりに、唸りをあげてゆっくりと開いた。

扉の向こうは地上まで突き抜けたように天井は見えず、巨大な煙突状のタンクが薄暗い中にズラリと並んでいた。
男はその異様な光景も気にする様子も無く、タンクの隅にわずかに設けられた通路を奥へと進んで行った。

どれ程歩いたのか。薄暗い廊下の先に、一転、輝く建物が浮かび上がる。直径20メートル程か。半球形の白い建物。通称〈ラボ・ドーム〉

表面には太い管が四方から伸びて繋がっている。まるで脳波検査をする機械のように。建物は周りからの明かりで照らされていた。


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