未来への扉〜Prologue〜-5
「こちらトランスフォーマー。ケヴィン・ブルンバーグだが?」
相手は名乗らず、重い口調で言った。
「ミスター・ブルンバーグ。今すぐプロジェクトを中止なさい」
その声には、〈連邦政府〉の威厳が見え隠れしていた。
しかし、ブルンバーグは臆する事無く受話器に向かった。
「何の事を言ってるんだ?」
「とぼけても分かっている。シャトルに積むはずでない〈モノ〉を積んでいるとな…」
相手の声は、苛立ちを隠そうとしない。対してブルンバーグは冷静な口調で、
「もし、いやだと言ったら?」
「その時は、ミサイルを打ち込んででも〈プロジェクト〉を阻止する」
堅い表情のブルンバーグ。
(…やはりな……だが、そんな事は折込済みだ)
ブルンバーグはひとつ深呼吸をすると、
「…話は分かった。プロジェクトは中止する」
そこまで言って、もう一度深呼吸をして、
「カーゴから取り出すには数分掛かる。それまで待ってくれ」
相手はしばらく沈黙した後、〈5分だけやる〉と言って電話を切った。
(…これでなんとかなるか……)
ブルンバーグの顔に笑みが浮かぶ。
電話から3分後、アトキンスとハーマンを乗せたシャトル〈ディスカバリー〉はゆっくりと基地から離れると、メインバーナーからプラズマを吹き出して、暗闇の中へと消えて行った。
「…頼むぞ…我々の夢……」
ブルンバーグは見えなくなるまでシャトルを見送った。
次の瞬時、稀有の衝撃が彼らを襲った。
炎が辺りを焦がす。
爆発とともに、塵と化した中継基地。衝撃で張力を失ったチューブは、幾重にも折れ曲がって地上へと落下していった。
時にAD,2,050年。
地球は人類の愚行から、破滅の道へと転がり落ちていた。
…「未来への扉〜Prologue〜」完…