イヴの奇跡U-6
『あの…ね、』
返答に躊躇うイヴ。
『…?』
待つ神崎。
『あの……えー…。』
『なんだ、早く言え!気になって仕方ないだろう。』
焦らされてモヤモヤとする神崎はイヴに返事の催促をする。
ふっ、とイヴが顔を上げて目が合う。
『だいすき…圭が、大好き。』
行為の後でまだ朱く染まる頬。
いや、行為だけのせいでもないのだろうが…。
『…違うな。』
神崎の否定的な言動にイヴの表情は悲しみへと変わる。
『圭は…嫌なの…?』
『それも違うな。』
二度目の否定。
ふぇぇ?とイヴは今にも泣き出しそうだ。
くんっ、と神崎はイヴの顎に手を当てて顔を上げさせる。
『好きだとか、大好きだとか、俺はそんな恋愛ごっこじゃない…。』
真剣な眼差し。
サファイアの瞳が青々と輝く。
見つめられたら、きっと誰もがその瞳からは逃れられないだろう。そしてイヴもまた、その一人。
『愛してる…。』
なんとなく、
イヴは瞳を閉じた。
唇が重なって、いつもとは違う軽いキス。でも、深い意味を持つ軽いキスだとイヴは心の中で確かにそう感じた。
『さ、風呂に入るぞ。』
そそくさと青いストライプパジャマに着替えて恥ずかしさを隠すように神崎はイヴをお姫様抱っこしてお風呂場へと向かう。
自分で言った言葉に恥ずかしくなり自滅したのだろう。
『ふぇぇー?!圭、私重たいよー!』
じたばたと暴れるイヴ。
『猫の時と比べて、な。』
暴れるイヴを易々と運び込み二人はお風呂場へと向かった…
その時だ。
─ブーッ。
室内にブザー音が響く。
『圭…?誰か…来たよ?』
『…珍しいな…誰だ?』
イヴを降ろして神崎はリビングに戻り玄関につけてあるカメラから訪ねて来た者を確認する。
『……。』
無言でカメラを見つめる神崎の顔が少し強張ってるようにイヴは見えた。
─ピー、カチッ。
チッ、と舌打ちの音が聞こえた。小さな舌打ちだったけど私の耳には確かに聞こえてきた。
圭が早歩きで玄関に向かう。