秋と春か夏か冬 14話〜『秋=アキ=シュウ』〜-4
「亜季…くじいた足…痛いだろ?」
「…大丈夫です」
「亜季……背中とだっこの2択だ…どっちが良い?答えないなら俺が選ぶからな…」
「恭介様……いじわるです……言うしかないじゃありませんか…」
「よし…お姫様だっこが良いんだな」
「言います言います!その…恭介様の……背中をお借りします…」
「始めからそう言えば良いんだよ」
そう言って亜季をおんぶする。
「恭介様は……意地悪な方です……もぉ…」
でも怒り口調の亜季は、どこか嬉しそうである。
そして、背中にいる亜季が俺に話しかける。
「あの…恭介様。シュウちゃんの男言葉を……あまり悪く言わないで欲しいんです…」
「…なにか理由があるのか?」
「ええ…わたしたちの父は男の子が欲しかったみたいで……もちろん可愛がってくれるんですけどね。
次は男の子が良いと言ってたんです。でも……その前に母は亡くなりました」
…そうだったのか。
「父は男の子が出来たら、一緒にスポーツをするのが夢だったみたいです。
それを聞いたシュウちゃんは……男言葉を使うようになり、活発に外で遊び、自分のことも『俺』と言うようになりました。
まるで母を亡くして、悲しんでいた父の想いをまぎらわすように……ですから…」
「…わかるよ。自分のことでも、人のためでも…夢を叶えたいってヤツの気持ちは………よく…わかる」
「……ありがとうございます…恭介様」
そしてシュウを見つけた。意外と近くにいた。
俺は亜季を降ろす。
「シュウちゃん!」
亜季は叫んだ。
愁はしばらく黙っていたが…話だす。
「わかってるよ。そいつが他のヤツと違うくらい…。昨日、家から帰ってきたアキを見てたらさ」
(ハンカチを見ながら…嬉しそうに、今日あった事を話す…アキの姿を見たときから…)
「…電車で話しかけてきたのが…昨日アキが言ってたヤツだって……すぐに気づいた」
(アキを心配する…そして俺が転ぶのを助けてくれた…優しくて…良いヤツだったから)
「でも……認めちゃうと…アキに大事な人が出来ちゃったら…俺は…」
(俺は……アキのそばにいられなくなっちゃう…)
黙ってしまう愁。亜季は口を開く。