秋と春か夏か冬 14話〜『秋=アキ=シュウ』〜-3
「…ふん!須野宮 愁(スノミヤ シュウ)だ。言っとくが、俺とアキは悪くねーぞ!電車でナンパしてきた…痴漢男が悪いんだ!!!」
確かに俺が悪いが……喧嘩腰のシュウに少しムカついてくる…。
「…はん!お前みたいなヤツをナンパするか!」
「な、なんだとぉー?」
「だいたいなんだ、その言葉遣いは!女の子が『俺』とか男言葉を使うんじゃない。それに俺は先輩だぞ」
「お前が先輩ぃ〜?なら痴漢じゃなくて先輩らしい行動しろってんだ!しかもアキに怪我させて〜」
2人で言い争う。
「シュウちゃん!今朝のことは誤解でしょ。
それに昨日、怪我したのは恭介様のせいではないわ。むしろ恭介様のおかげで酷くならなかったの。
悪く言うのは…シュウちゃんでも許しません……」
きつく言う亜季。
そして…
「うぅ…アキの…アキのばかぁ〜!」
俺の時とは違い…言い返せずに、泣きながら走り去ってしまった。
「すみません皆さま…ホントはとても優しい、良い子なんです…」
…あれが?
「小さいときに母を亡くしてしまって…人一倍甘えん坊だったシュウちゃんにとって……わたくしは母でもあり、姉でもあるんです…」
なるほど…。
「双子なのに性格が正反対ってのも変な話だと思ったよ」
「ええ…ですからシュウちゃんは……わたくしを傷付けたり、近づく人を好ましく思わないんです。それも異性の方を特に…。わたくしをとられると思っちゃうようで…」
苦笑いする亜季。
「可愛いんですが、今回みたいなこともよくあって……その度に少し手を焼きます…」
そこで鈴音が口を挟む。
「恭介。亜季ちゃんと一緒にシュウちゃんを追いなさい」
「はっ?いやいや…俺が行ったら逆効果だろ」
「良いから!その方が良いのよ」
なぜだ?みんなを見てみると…
「…こく」
うなずいている…なんだ?その『恭介なら出来る』って目は…。
「恭介様……わたくしからも…どうか…お願いします」
おまえもか亜季…。
「…はぁ。しょうがない…行くぞ」
「はい」
恭介と亜季は走って行った。
「……うぅ。僕の恭介がぁ…しょうがない…今回だけは見逃すよ…」
「……今回…だけです」
なんとか自分に言い聞かせている、夏輝と香織であった。
少し走り、恭介は亜季の足の捻挫を思い出す。