秋と春か夏か冬 13話〜『痴漢男』〜-4
「ふふ♪そうですね。わかりました恭介様」
「様って…普通で良いんだけどな」
「そんな…助けて頂いた殿方を呼びつけにするなんて…わたくしには出来ません」
「まぁ呼びやすい名で良いよ。それより…まだ何か買い物して行くのか?」
「いえ、外に車を待たせているので…もう帰るところでした」
「そうか。ならそこまで運ぶよ」
亜季をお姫様だっこで持とうとする。
「ぁ、あの……少しお待ちください!」
「どうした?」
「心遣いは大変嬉しいのですか……その、わたくしの心の準備と言いますか……」
「……恥ずかしいってこと?」
「…はい…」
再び真っ赤になり、コクっと頷く亜季。
「じゃぁ背中に乗って。それなら良いだろ」
「…それも…自分で歩けます…」
「ダメだ。捻挫は無理すると癖になる。どっちか選べ」
少し強めに言うと亜季は観念した。
「では…背中で…お願いします…」
「よし!」
そう言って亜季を車まで運んだ。
その間に色々話した。
亜季は俺たちと同じ学校らしい。年は1つ下……つまり高校1年生だ。
口調のせいか、その割りに大人びて見える。
迎えの車は高級そうな外国の車…どうやらお嬢様らしい。
そして帰り際…
「あの、恭介様!お借りになったハンカチを返さないと…」
「良いって…冷やしとけよ。帰ったら捨てちゃっても良いからさ」
「そういうわけにはいきません!」
「…じゃぁ学校で返してくれ。同じ学校だから会うだろ?」
「…はい♪」
そう言って亜季は車で帰って行った。
「恭介様……優しくて…たくましくて…素敵な殿方………♪♪」
ドキドキが止まらない亜季であった。
恭介の方は…
「やばい……だいぶ時間が減ってしまった……頼まれた物を早く買わないと…杏子に殺される…」
違う意味でドキドキだった…。
えっ?
これじゃ恭介の天然ジゴロが炸裂しただけだって?
違います……問題は次の日の朝なのです。