秋と春か夏か冬 13話〜『痴漢男』〜-3
ドンッ
「きゃっ…」
角を曲がったところで少女とぶつかってしまった。体の小さめの少女は倒れてしまう。
「悪い。注意してなかった……大丈夫か?」
「いえ…こちらこそ…わたくしの不注意です」
少女は少し痛そうにしながら顔を上げる。
「……貴方様はさっきの…」
「あぁ、偶然だな」
「くす♪そうですね♪」
「立てるか?ほら」
恭介は手をさしのべる。
「まぁ…わざわざありがとうございます♪」
少女は恭介の手を借り、立とうとする……が、
「痛ッ…」
「大丈夫?どこか怪我した?」
「少し足を捻って……でも大丈夫です」
笑顔で言うが、かなり辛そうだ。
見ると少し腫れていた。
「腫れてるじゃないか…悪い…俺のせいで」
「いえ。こちらもよそ見をしていましたので…気にしないで下さい」
「でも…とりあえず座るところを……少し我慢してくれ」
「え…きゃぁ」
少女の膝の裏と背中に手を回し走る……俗に言うお姫様だっこである。
「ぁ…ぁの…」
少女は真っ赤になっていた。
「しっかり捕まっててくれよ。イスは……あった」
ちょうどよくベンチを見つけ、少女を座らせる。
「少し待っててくれ」
そう言って恭介はどこかへ行くが、すぐに戻ってきた。
「ハンカチ濡らしてきたんだ。冷やさないとな」
「お詳しいんですね…それに…優しいお方…♪」
「俺のせいで怪我させちまったし…捻挫とかはバスケやってたから慣れてるんだよ」
「くすくす♪怪我に慣れていると言うのも…不思議な話ですね」
「はは、そりゃそうだな」
「ふふふ♪ところで…殿方のお名前は…なんとおっしゃるのですか?」
「殿方って…俺は秋津 恭介」
「秋津 恭介…素敵なお名前ですね…わたくしは須野宮 亜季(スノミヤ アキ)と申します。亜季…とお呼びください♪」
「亜季…同じ『あき』同士だな。おれは恭介で良いよ」