罪〜Revision〜-10
「さっ…食べましょう!」
亜紀は照れを隠すように、盛り付けた皿をダイニング・テーブルに忙しく置いていく。その表情は嬉しそうだ。
「ん…美味しいよ!姉ちゃん」
貪るように亜紀の作った料理を食べる和哉を、嬉しそうに見つめる亜紀。その表情は慈愛に満ちていた。
「姉ちゃん、お風呂空いたよ」
和哉が風呂から上がると、亜紀はリビングでテレビを見ていた。
こんな時間にテレビを見るなんて何ヶ月ぶりだろう。
「うん、入る」
そう言って亜紀は起き上がり風呂場へと向かった。
彼女が湯船に浸かっていると、パラパラと外から音が聞こえてくる。
「何…雨?」
そういえば今日は夕方になっても蒸し暑さは消えず、虫の声も聞こえないと思っていた。
雨足はやがてザザーッという断続的な音に変わった。
「あ〜あ、雨か…やだなぁ」
亜紀はそう言ってから湯船から上がると、身体を洗い出した。雨の音に合わせるようにハミングを口ずさむ。
腕から首筋、胸からお腹へと洗う。と、風呂場の窓ガラスがフラッシュを焚いたように一瞬、白く輝いた。その数秒後、凄まじい音が亜紀を襲った。音に共鳴してガラスがビリビリと音をたてて震えている。
「ひっ!」
悲鳴を挙げる亜紀。カミナリは大の苦手だった。彼女はそそくさと身体と頭を洗うと、足早に風呂場を後にした。
*****
夜10時を過ぎて2人はお互いの部屋に戻る。雨音は益々激しさを増しカミナリも鳴り続けている。
和哉はカミナリを気にせずウトウトし始めた頃、部屋のドアーが開いた。
亜紀が立っていた。
戸惑う和哉。
「どうしたの?姉ちゃん」
対して亜紀は、しどろもどろな口調で、
「エヘヘッ、え〜と、たまには姉弟で一緒に寝るのも良いかな〜ってさ!」
和哉はニヤリッと笑い、
「ようするにカミナリが恐いんでしょ」
亜紀はマクラで顔を隠すと、
「エヘヘ…いいでしょ!」
亜紀はゆっくりと和哉のベッドに潜り込んだ。お互いが向き合うように顔を見合わせる。視線を逸らさない。
激しい雨音さえもお互いの耳には届いていなかった。