冷たい情愛11-4
前面を服で隠す私の手を、彼の手が優しく掴む。
逆らおうとは思わなった。手が動いた瞬間に、服が私の大腿へ滑り落ちる。
胸の膨らみが露になると、彼はそこに優しく唇を這わす。
舌ではなく唇を這わす行為が、性的でない…違う感情を高ぶらせる。
この感情を、素直に受け入れてもいいのだろうか。
怖い…私は怖いのだ。
愛情ある行為を受け入れるのが、幸せなのに怖いのだ。
それがどれだけ甘美で心を溶かし、幸せをもたらすのかを…
そして…
それを一度知ったら、失った後に底の見えない悲しみが待っていることを…
知っていたから。
それでも…
幸福の芽が大きくなるのを、止められない私もいた。
底の見えない悲しみも…いつか過去に変わる瞬間を知った私がいた。
膨らみの先端に唇が触れる。もう一方の膨らみを大きな手が覆う。
こんな微弱な刺激に、私は今まで以上の感情をおぼえる。
「あっ…」
声が出てしまう。
唇を這わせたまま、彼は私の背中に手を回し優しく触れる。
彼の手は、そのまま腰部から大腿へ降りてくる。
ずっと優しい動きのまま、彼は私の体の形状を確かめるように撫で続ける。
音の全くない部屋。
そこには、私が我慢できず漏らす声と彼の少しだけ荒くなった呼吸の音。
彼は、私から少しだけ離れた。
彼の表情が私の視界に入ってくる。
少し潤み、それでもまっすぐな視線。
元々「静」という形容が似合う彼だが、今の彼はそんな「静」の中で…発情しているのが分かる。
私が先に、動物のように発情していた今までとは違い…
私の心がまだ乱れる前に、彼の心の中が淫らな行為に向かって高ぶっているのが分かるのだ。
彼は私の肩に大きく腕を回し、床に私の体を寝かせた。
何も身に着けない私の体を、彼は少し上から眺めている。
まっすぐな目。
私の表皮の細胞を、ひとつひとつまで見られているような感覚。
体より先に、心の芯がどんどん熱を帯びる。
好きな男に、見つめられる快感と羞恥。
「貴方のことが…好きです」
彼はそう言った。
そして…私は
少しだけ
泣きそうになった。