華麗なる1日-2
午後7時。
パソコンによる分析も終えた一巳は、そろそろ帰社しようと思っていた。
その時だ。
「藤野君。ちょっといいかな?」
上司が書類を持って、彼に近寄って来た。
「何でしょう?」
「市立〇〇センターの件だが、担当者から来週すぐにも中、長期計画案を提出してくれと言ってきてるんだ」
「えっ、その件は来月って話じゃ……?」
「担当者が来月異動らしいんだ。だから、引き継ぎのために必要らしい」
一巳の顔が曇る。
(だったら帰ってすぐに教えろよ……帰る間際になって……)
「間に合うかな?」
遠慮がちに訊いてくる上司に対し、一巳はムリヤリ笑顔を作る。
「今からやります。大丈夫です」
上司は一巳に微笑みかけ、
「…じゃあ頼むよ」
そう言うと事務所を後にした。
ひとり残された一巳の、キーボードを叩く音だけが虚しく響いた。
午後8時半。
美香はテレビを眺めていた。まさに眺めてるだけで、内容など見ていない。
部屋の時計を見つめる。先刻から何度目だろう。彼女はテーブルに並べた冷めた料理をチラッと見てため息を吐くと、
「…もういい…」
険しい顔でそう呟き、料理を持ってキッチンへ向かった。
しばらくして温め直した料理と、冷えたシャンパンを抱えて部屋に戻って来た。
「アイツが来ないなら、ひとりでやるわよ」
独り言でグチを言い、シャンパンの栓を抜いた。
目を吊り上げて。