夕焼けの恋愛模様-1
彼はとても不思議な人だったと思う。
目付き鋭くて、無口で、そんな美人じゃないのに、すれ違えば振り返ってしまう魅力、雰囲気を持っていた。
女子の間でも彼は人気があったり、彼が告白されたとよく耳にする。
きっと、沢山の友達がいて。きっと、沢山の人に大切にされているのだろうと思った。
なのに、彼の周りには誰もいなかった。
いつも孤独で。
いつも不機嫌で。
いつも何かに囚われているような…。
だから私が少しでも、ほんの少しでも助けになりたかった。
多分、同情。
昔の私もそんな感じだった。昔の自分を見てるようで、何か嫌だったから。
「いつも独りぼっちだね?」
放課後の夕焼けが包む屋上。人気のない校舎。彼に話し掛けた。
「友達にならない?」
「…………はぁ?」
彼は警戒した様子だった。それはもう面白いくらいに。
私は腹を抱えて笑ってしまった。おそらく、変な奴と認識されただろう。だが、そんなこと気にもならなかった。
それから時々、放課後、屋上にいる彼に会いにいった。
「やっほぉ、元気ぃ?」
「……またお前か…」
彼はそのたびに、面白いほど警戒した様子をしてくれて、私は飽きることはなかった。
ある日、彼に聞かれた。
自分に会いにくるのはなぜか、と。
そして、自分を好きになられても困る、とも。
私はとりあえず、デコピンをかまして言ってやった。
「君って自意識過剰ー」
なんか他の女子と一緒にされた気がして、とても嫌だったから。
「……うっさい…」
彼はおでこを押さえ、弱々しくだが微笑んだ。
後に思えば、これが彼が初めて私に見せた笑顔だった。
それから、月日が流れて彼とも打ち解け始めた頃。
彼はもう面白いほどの警戒をしなくなり、私は楽しみのひとつを失ってしまった。
たが、それ以上に彼との会話が楽しくて、面白くて、飽きることはなかった。