夕焼けの恋愛模様-4
数日後の放課後、彼の嫌な噂を聞いた。
そして、私は走っていた。
流れる涙も。息切れする身体も。スカートの裾も。何も気にならない。ただがむしゃらに走った。
行き先は、屋上。
屋上のドアの前に着いた。
開けばいつものように彼がいるはずだ。
そう、あの時と同じようにきっと笑顔で迎えてくれる。
そんな噂だって嘘と言ってくれる。
息切れする身体を、落ち着かせようと深呼吸する。
瞳から勝手に溢れ出ていた涙を拭い、平然を装う。
私は意を決してドアを開けた。
私の瞳に映ったのは、誰もいない屋上と寂しげな夕焼けだけだった。
噂は本当だった。
彼は死んだ。決められた死によって。
それから私は愕然と、ただ漠然と毎日を過ごした。
ただ無意味に屋上に行っては、ひとりぼっちで夕焼けを眺めた。
そして、気付いてしまった。
私は、彼のことが好きだったんだ、と。
沸き上がるのは、過去への後悔。素直にならなかった自分への怒り。
言いたい言葉があった。
もっと色んなこと見て、色んなことを話したかった。
心が、身体が、とてつもなく苦しかった。
私は弱々しく泣き崩れるだけだった。
彼に紹介された少女が会いにきた。
彼女の目は腫れ上がっていた。きっと私も同じだろう。
でも理由は違う。私はただ悔しさや苦しさ、自分勝手な理由。一方、彼女はきっと彼のためにた。
彼女はこれ、とぶっきらぼうに手紙を渡してきた。
「あなたに渡せって、頼まれてた」
悲しげな彼女が一方的に渡されたのは、封に閉じてある手紙だった。
手紙には、彼の気持ちが書かれていた。
死に逝く命だった。
だから友達や恋人をつくらないほうがいいと考えた。
君に会えて変われた。
もっと前向きに、希望を持てるようになった。
君に会えなくて、嫌われたかと不安だった。
君がまた、笑ってくれた時は、とても嬉しかった。
君の笑顔に僕は救われた。